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なぜ『ポッキー』CMは踊らなくなったのか?

(左から)『ポッキー』CM「何本分話そうかな」シリーズに出演する母親役の宮沢りえと娘役の南沙良

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 発売から50年以上経過し、江崎グリコを代表する不動の商品『ポッキー』。そのCMと言えば、若手女優や男性グループが踊るダンスを思い浮かべる人が多いだろう。だが近年、同CMではダンスをメインとした展開が影を潜めている。同CMの変遷をたどりながら、“なぜ『ポッキー』のCMは踊らなくなってしまったのか”を探った。

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■子ども向けから一変 夜の街で“大人のたしなみ”として流行 幅広い世代への訴求

 『ポッキー』が誕生したのは1966年。60年代は、明治や森永製菓の板チョコレートが全盛の時代。そこで江崎グリコは、食感も味わいも軽いライトなチョコスナックで攻勢を図ろうと『ポッキー』を開発。「ポキっとした食感」から『ポッキー』と命名した。手が汚れるのを防ぐため、持ち手部分を残して開発したのも功を奏したのであろう。子どもを中心に注目を集め、爆発的なヒット商品となった。

 発売から20年経ち、時代はバブル景気に突入。同社は、もっと大人にも『ポッキー』を食べてもらおうと考え、ある施策を打ち出した。それが「ポッキー・オン・ザ・ロック」である。『ポッキー』をマドラー替わりに使ってクルクル回す、あの食べ方だ。

 当時『ポッキー』は、お酒に合うチョコレートとされ、飲食店のメニューの一つとして出されていた。また大阪のクラブなどでは、お姉さんが『ポッキー』をマドラー替わりに使ってクルクル回すのがはやっていたという。そういった事象から、「ポッキー・オン・ザ・ロック」は発案されたのではないかと言われている。

 同社は、「ポッキー・オン・ザ・ロック」というキャッチフレーズでキャンペーンを展開。CMには松田聖子を起用し、実際に『ポッキー』を使ってグラスの中でクルクル回す演出を取り入れた。CMは大きな話題となり、子どももジュースで試すというプチ社会現象も起きた。

 また80年代は、「旅にポッキー」というテーマでもキャンペーンを展開した。当時、女性ファッション誌はこぞって旅特集を組むなど、OL同士の旅行がはやっていた時代。そこで『ポッキー』CMでは、松田聖子に加え菊池桃子を起用し、さまざまな観光地で『ポッキー』を食べる姿を映した。『ポッキー』は持ち運びにも適しているお菓子なので、OLにも食べてもらおうという思いがあったのだろう。

 90年代もさまざまな『ポッキー』CMが制作されたが、中でも注目を集めたのは「ポッキー四姉妹物語」だ。『チョコレート』と『アーモンドクラッシュ』、『つぶつぶいちご』、『マーブル』の4つの味を擬人化しCMを制作。四姉妹には、それぞれ長女・清水美沙、次女・牧瀬里穂、三女・中江有里、四女・今村雅美を起用した。味の特徴をしっかりと打ち出すために取り入れた擬人化という手法は、当時、非常に斬新だった。

■“ガッキー”ブレークのきっかけ 『ポッキー』CM=踊る定着

 そして2006年、ある革命的なCMが制作される。当時、それほど名前が知られていなかった新垣結衣を起用した、“あの”ダンスCMだ。同CMは大ヒットし、新垣結衣の存在を一気にお茶の間に知らしめることに成功した。

 キャッチコピーは「Stick to fun!」。『ポッキー』があると楽しい時間が過ごせるというメッセージを伝えるため、CMにダンス演出を取り入れたのであろう。結果、『ポッキー』の食感や軽やかさが、見事にダンスで体現されていた。

 さらに2008年には忽那汐里、2015年には 三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE を起用するなど、ダンスCMを続けて展開。『ポッキー』CMと言えば“踊る”というイメージが定着していった。

■男性から中高生、そして主婦層へ ターゲットは常に変化

 ところが、現在放送されている『ポッキー』CM「何本分話そうかな」シリーズは、全く踊っていない。母親役の宮沢りえが、娘役の南沙良と「『ポッキー』何本分話そう」と語る物語風に仕上がっており、ダンスCMの頃のような明るさや楽しさ、弾けたイメージは描かれていない。

 これまで『ポッキー』CMにダンスが取り入れられてきたのは、あくまで中高生にアプローチするためだろう。現にYouTube上では、中高生らによる“シェアハピダンス”の投稿が相次ぐなど、幅広い支持を得ていた。

 しかし実際に購入しているのは、中高生より購買力のある主婦層だ。「お母さん買って」と子どもから頼まれて購入しているケースも多いはず。今回の「何本分話そうかな」シリーズは、購入している主婦層をメインターゲットにしてCMを制作したと思われる。

 また近年はスマホの普及で、リアルなコミュニケーションが失われつつある。最も身近な存在である家族との間でもリアルな会話が減っており、子どもがスマホばかり見ている光景は、よく家庭でも見られるのではなかろうか。だが同CMシリーズのように「ポッキー食べる?」といったコミュニケーションがあることで、子どももスマホから顔をあげる。『ポッキー』を分け合いながら、「学校どうだった?」といった問いかけもできる。同CMシリーズは、そんな今の時代を反映した、現代のリアルな“シェアハピ”を描いているのかもしれない。

■SNSで「ポッキー&プリッツの日」普及 しかしロングセラー商品ゆえの悩みも

 一方、スマホの普及により功を奏したこともある。それは11月11日の「ポッキー&プリッツの日」の周知だ。「ポッキー&プリッツの日」が制定されたのは、1999年。当時はそれほど浸透していなかったが、近年スマホが普及しSNS時代に入り、11月11日に『ポッキー』と投稿する人が増加。スマホとSNSがなければ、「ポッキー&プリッツの日」は広がることはなかった。

 今も『ポッキー』には、お酒と合う、旅のお供にも合うというイメージが浸透している。それは『ポッキー』CMにおける財産であり、『ポッキー』の概念は、現在の“シェアハピ”にも脈々と受け継がれている。

 しかしロングセラー商品のゆえ、食べる人は常に固定化しがちだ。CMは単に商品を売るためだけに存在しているのではない。視聴者を楽しませるために、その時代に合った社会的意味を持たせるために、どの会社もあの手この手で策を練っている。今後、『ポッキー』がテレビCMやSNSなどを通して、どんな新しい食べ方や楽しみ方を提案してくれるのか、楽しみにしたい。

(文:衣輪晋一)

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