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突然キレる「凶暴老人」が急増中、日本人特有の事情を認知脳科学者が解説

ここ20年間で高齢者の暴行・傷害件数はおよそ20倍以上に膨れ上がっているという(※画像はイメージ)

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 最近、駅員やコンビニ店員などに対して、ものすごい剣幕で怒鳴りつける高齢者が増えているような……そう感じている方は少なくないはず。実際、ここ20年間で高齢者の暴行・傷害件数はおよそ20倍以上に膨れ上がっているというのだ。なぜ日本の高齢者はキレやすくなっているのか、『凶暴老人』(小学館新書)の著者で、名古屋大学大学院情報学研究科の川合伸幸准教授(中部大学創発学術院客員准教授)に話を聞いた。

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 2015年6月、JR京浜東北線の車内で71歳の男性が隣に座っていた男性と口論になり、包丁を突きつけ逮捕された。16年3月には、兵庫県・加古川市で75歳の男性がタバコのポイ捨てを注意した小学校1年生の男児の首を絞め、逮捕されている。 

 また今年5月にも、三重県名張市の公園でサッカーをして遊んでいた中学生のボールが自分の車に当たったことに腹を立て、中学生の髪の毛を掴むなどし、67歳の男性が逮捕された。

ここ20年間で高齢者の暴行・傷害件数はおよそ20倍以上に膨れ上がっているという(※画像はイメージ)

 こうした“高齢者の凶暴化”。それはさまざまなデータからも明らかだ。

 法務省発表の2017年版「犯罪白書」によると、16年の65歳以上の高齢者の検挙人員は、暴行が4014人、傷害が1809人。この人数は、平成に入ってからずっと右肩上がりの傾向にあった。97年と比較すると、17・4倍ともなる。

 こんなデータもある。日本民営鉄道協会が大手私鉄16社、全国のJR6社、地方公共交通12社の鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況をまとめた調査結果だ。17年度に起きた計656件の暴力行為のうち、60代以上の加害者が占める割合が23.3%(153件)と、もっとも高いという。

 ただし、こうしたデータには“統計のトリック”が隠されていることも事実。少子高齢化が進む日本では、17年10月時点で65歳以上の人口は3515万人となり、総人口に占める割合も27.7%と、年々上がり続けている(内閣府がまとめた2018年版「高齢社会白書」より)。

「実は警察庁の人口10万人あたりの刑法犯検挙人員は、ここ10年間、どの年代でも減っています。しかし、犯罪件数が減っても、高齢者の数は増え続けているので高齢者の占める割合が上昇し、増加しているように見えるのです。とはいえ、それらの問題を抜きにしても、暴行や傷害事件に関しては急激に増えていますが……」(川合氏、以下同)

キレやすくなるのは前頭葉の衰え

 なぜ、ここまで高齢者は怒りやすくなっているのだろうか。川合氏は、原因をこう分析する。

「まず、怒りの感情は脳の“大脳辺縁系”というところでつくられ、その怒りを抑制する役目を果たすのが“前頭葉”になります。前頭葉は、年齢とともに機能が低下するので、普通なら我慢できるようなことでも高齢者は感情を抑え切れず、つい言動に出てしまいやすいといえます」

 しかし、脳科学的な話だけであれば、日本に限らず諸外国の高齢者にもあてはまるようにも思えるし、日本でキレる老人が“急増”している理由も説明できない。

 川合氏は、キレる高齢者が急増している背景には、現代日本特有の社会構造の変化が関係しているという。

「私が調べたところ、海外では、高齢者がキレやすくなっているという事例や研究論文などはほとんど見つかりません。となると、日本の高齢者の問題は、社会的な孤立にあると考えられます。海外では仕事場以外の友人がいるのは普通ですが、特に定年後の日本人男性は、会社を離れるとまったく人付き合いがなくなる人が多い。人間関係が希薄な都市部で暮らす人は、自宅でも奥さんに邪魔者扱いされて居場所がなく、ストレスが溜まっていることも一つの要因にあるのではないでしょうか」

 2018年版「高齢社会白書」(内閣府)の60歳以上の高齢者の近所付き合いの程度を見てみると、「あまり付き合っていない」「全く付き合っていない」の合計は、女性が18.8%なのに対して、男性は26.5%にものぼる。

 このデータからもわかるように、女性よりも男性のほうが、社会とのつながりが希薄であることも、感情が爆発するきっかけになっているといえる。

怒り抑制に一役買う有酸素運動

 高齢者がキレにくくなるためには、どのような対策が有効なのか。川合氏は次のように語る。

「散歩などの有酸素運動が一番効果的です。年をとると一般的には脳内の神経細胞が新しく生まれにくくなりますが、運動をすることで脳の血管が大きくなって血液が刺激され、新しい神経細胞がつくられやすくなるのです。そうなれば、感情の抑制機能が改善されることが期待でき、キレにくくなるでしょう」

 アメリカ・イリノイ大学のクレーマー教授は、ウォーキングを6カ月間行なった高齢者の脳の機能を調べたところ、運動を行なう前よりも前頭葉の活動量が増加し、脳の認知機能が向上することを示した。

 これまで、脳の前頭葉の機能低下と社会での孤独感が、高齢者をキレやすくさせている要因だと述べてきた。

 一方で、日本社会の高齢者に対する接し方が変化していることも大きいのではないだろうか。

 たとえば、昔は“高齢者を敬いましょう”という社会の共通認識があった。しかし、ここ近年は滅多にそのような言葉が聞かれなくなった。

 というのも、現代の日本では、お金を持っていて、仕事をせず元気に暮らしている高齢者に対して、嫉妬心などから多くの人が親しみを感じていないことも大きいだろう。
 
 老いとともに、高齢者が疎まれるような社会になっていることが、キレる高齢者の増加に一役買っているのかもしれない。

取材・文/福田晃広(清談社)

週刊新潮WEB取材班

2019年5月25日 掲載

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