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【加谷珪一】「社内失業」という大問題を克服しなければ、日本経済の復活ナシ 「終身雇用」をどう考えるか

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メガバンク、富士通、NEC、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスなど、いわゆる一流企業におけるリストラが加速している。多くが45歳以上の中高年社員を対象としたものだが、各社に共通しているのが、大量の社内失業者問題である。

日本は人手不足と言われているが、これはあくまで現場の話に過ぎない。多くの企業ではホワイトカラーを中心に大量の余剰人員を抱えており、これが日本企業の経営に致命的な影響を与えている。

これまでホワイトカラー層の雇用は「聖域」とされ、余剰人員の話題はタブー視されてきた。言い換えれば、この部分に手を付けなければ、日本経済の復活はない。

リストラは業績が悪い企業だけにとどまらない

富士通は2018年10月、グループ全体で5000人という大規模な配置転換を実施する方針を打ち出した。45歳以上の正社員や定年後に再雇用された社員を対象に、希望退職やグループ内の配置転換を促すとのことだが、特に注目を集めたのが、人事、総務、経理など、間接部門の社員を、営業やSE(システムエンジニア)などの収益部門に異動させる措置である。三菱UFJ銀行も2023年度までに本部に所属する行員を半減し、営業部門へのシフトを進める方針を示している。

国内市場は今後、縮小することが確実視されていることに加え、既存業務をRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)を使って自動化するという流れが加速しており、事務部門を中心に大量の余剰人員が発生しつつある。

余剰となった間接部門の社員に研修を実施し、収益部門に配置転換すれば業績が拡大するという話は理屈としてはその通りだが、現実はかなり厳しいだろう。長年、間接部門で仕事をしてきた社員が、スムーズに営業マンに転身できるとは考えにくく、これは事実上の転職斡旋であるとの受け止め方がもっぱらである。

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このほかにもリストラ計画を打ち出す企業が相次いでいるが、多くが間接部門の社員を対象としている。

富士通やNECは業績が低迷している企業だが、人員削減の流れはそうした企業だけにとどまるものではない。日本企業としては空前の好業績をあげているソフトバンクグループでも、業務自動化で余剰となった6800人を配置転換するとしており、この流れは業種や経営状況とは無関係と考えた方がよさそうだ。

働かないオジサンが大量生産される理由

一連の出来事の背景となっているのは、日本型人事の制度疲労であり、もっと具体的に言えば、企業が大量に抱え込んだ社内失業者の問題である。

ここ数年、日本では人手不足が深刻な状況であると言われてきた。確かにその通りなのだが、すべての分野において人が足りないわけではない。もっとも人手不足が深刻なのは、小売店や外食チェーン、運輸、介護など、若い世代の労働者を大量に必要とする業界である。

過去10年における日本の人口はほぼ横ばいに近い状態で推移してきたが、総人口が変わらなくても高齢化は進んでおり、同じ期間で35歳以下の若年層人口は17%も減った。逆に中高年以上の人口は横ばいかむしろ増加しているので、現場を抱える企業を中心に、若い人材の確保に苦労する一方、事務職を中心に企業内には大量の中高年ホワイトカラーが余っている。

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リクルートワークス研究所の調査によると、日本企業の内部には、実は400万人もの社内失業者が存在しており、2025年には500万人近くになる見通しだという。これは全従業員の1割にも達する数字である。時代の変化で新しい人材が必要となり、採用を増やしているものの、スキルが合わなくなった社員を抱えたままなので、日本企業の総人件費は増大する一方だ。

配置転換を実施しようにも、新業務に必要とされるスキルと本人が持つスキルが一致しないため、社内の異動にも限界がある。結果として、事実上、仕事がない状態で社内の各部署に人材が埋もれてしまっている。ネットでよく話題になる、いわゆる「働かないオジサン」が大量生産される背景にはこのような事情がある。

実は外国人労働者など必要ない?

大量の社内失業者を生み出す根本的な原因となっているのは、説明するまでもなく終身雇用制度と年功序列の賃金体系である。企業は自らの都合で簡単に社員を解雇できないため、一度、雇った社員は半永久的に雇用する必要がある。市場環境の変化にすぐに対応できる社員は限られるので、どうしても人材のミスマッチが生じてしまう。

全員が一律に昇進するのではなく、業務や能力に応じた給与体系になっていれば、ずっと現場でよいという社員も出てくるので、仮に終身雇用であっても企業の負担はそれほど重くならない。

だが、基本的に全員が年次で昇進し、形だけであっても管理職に登用されるシステムのままでは、賃金が高く、現場の作業を忘れてしまった大量の中高年社員が出現するのは必然といってよい。

社内失業の問題は実は日本経済に深刻な影響を与えている。

安倍政権は産業界からの強い要請を受けて、大量の外国人労働者受け入れに舵を切った。保守を自認する安倍政権が事実上の移民政策を推進するというのは奇妙な話だが、法律が施行された以上、今後、現場における外国人労働者の比率は確実に高まるだろう(日本の場合、保守・リベラルの対立は多分に情緒的なものであり、イデオロギー論争とは捉えない方がよい)。

日本では、すでに外国人労働者が140万人働いており、受け入れ拡大に伴ってあらたに入国する外国人は年間数万人と言われている。だが先ほど説明したように企業内には何と400万人もの社内失業者が存在している。

現在、外国人労働者が担っている業務を、社内失業者がそのまま引き継げるわけではないが、数字上は、社内失業者が労働市場に出てくれば、人手不足などすぐに解消するレベルの話なのだ。

財界トップが終身雇用見直しに言及した切実な理由

企業というのは、そもそも自ら新陳代謝していく存在であり、人材の入れ換えなしに時代の変化に対応するのは不可能である。諸外国の成長企業は常に人材の入れ換えを行っており、これが競争力の源泉になっていることは明らかだ。

身近なケースを想像してもらえば分かると思うが、何十年も同じメンバーで同じような仕事を続けている組織において、イノベーティブな発想が生まれてくるはずがない。

ところが日本企業は、同じ人材だけで変化の激しいこの時代に対応しようとしており、常識的に考えてこの仕組みがうまく機能するとは思えない。

先日、経団連の中西宏明会長とトヨタ自動車の豊田章男社長が、相次いで終身雇用制度の見直しについて言及した。終身雇用に関する話題はタブー視されてきた経緯を考えると、これはよほどの事態と捉えた方がよい。前から分かっていたことではあるが、いよいよ日本企業は終身雇用という負荷に耐えられなくなっている。

政府が70歳までの雇用義務化に向けて動き出したことから、企業は定年後の再雇用において大幅な年収引き下げや職種の転換を急ピッチで進めている。再雇用されれば、確かに書類上は同じ企業に継続して勤務することになるが、年収や仕事内容も大きく変わるとなれば、これは事実上の転職に等しい。

事実上の転職が強要されるのであれば、労働市場で幅広く人材をマッチングした方が、適材適所が進むのは明らかであり、これは企業にとっても、そして労働者にとってもメリットがあるはずだ。人の移動と経済成長には密接な関係があり、移動が活発になるほど消費も拡大する。終身雇用を維持できないのであれば、労働市場を拡大させる方向を目指すべきである。

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