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ブルーボトルコーヒーに見るリアルライフの日韓関係


ブルーボトルで1時間半待った末、アイスカフェラテをゲットした女性2人=韓国・ソウル市、神谷毅撮影

韓国で、初めて会う取材先に私が名刺を渡すと、時候のあいさつのように、よく聞かれることがある。

「日本の朝日新聞の方ですか? アサヒビール、私も大好きですよ」

資本関係のある会社と誤解しているのだろうけれど、私はこんなふうに答える。

「私もアサヒビール、大好きですよ〜」

最近では取材が終わりにさしかかると、こんな質問を相手からされることが多くなった。

「家族旅行で日本に行くのですが、今の『嫌韓』の雰囲気はどうでしょうか?」

やはり心配なのだろう。旅行では全く大丈夫だと伝えると、次は、こんな質問が寄せられる。

「老舗のおいしいお店を知っていたら、ぜひ教えてください」

これには、こんなふうに答えるようにしている。

「私の話よりも、SNSで最近の口コミをご覧になるといいかもしれません。いろんな情報が得られますよ」

インスタグラムなど韓国の人たちがよく見るSNSには、日本旅行の最新情報があふれている。
韓国の人たちは、自分たちの日常の暮らしで見たり感じたりしたことを、SNSを通して積極的に発信することが大好きだ。

日本のバルミューダ社製のトースターや空気洗浄機が人気。最新情報はSNSに飛び交っている=黄宣真撮影

SNSを使えば、自分と似たような年齢や趣味を持つ人たちと双方向のコミュニケーションができる。その点では、旅行をしようと思っている人たちにとって、SNSは単なる情報収集のツール以上の意味を持つようになってきていると思う。

米国発のコーヒーチェーン「ブルーボトル」。米西海岸のカリフォルニア・オークランドの小さな倉庫で生まれ、全米に広がった。コーヒー界の「Apple」とも呼ばれる。5月3日、韓国ソウルにも1号店がオープンした。

ソウルにオープンしたブルーボトル1号店の内装(ブルーボトル提供)

お客さんが注文をしてから、1杯ずつハンドドリップで、ゆっくりゆっくりと淹れる。「スローコーヒー」ともいえるそんなスタイルが、何でもかんでも「パルリパルリ(早く早く)」が特徴の韓国の人たちにもウケているのだ。私も、日本を旅行で訪れたときにブルーボトルで飲んだカフェラテのおいしさを思い出した。

オープンから1週間後の、5月10日午後1時ごろ。私もソウルの1号店に行ってみた。店に近づくと、建物の外で50人ほどの人たちが列をつくっていた。「人気のお店だから、このくらいは待たないとね」。そう思いながら歩いていくと、案内のスタッフが私に教えてくれた。「今から待つと、そうですね……。1時間半ほどでしょうか」

建物の外だけでなく、お店の中にも多くの人が待っていた。200人ぐらいはいるだろうか。「初日は午前8時にオープンしたのですが、夜の12時から待っていた人がいました。今朝も5時から列を作っていたお客さんがいましたよ」。スタッフが興奮しながら話した。

オープンして1週間後、昼過ぎのブルーボトル店舗の様子。店を取り巻く長い行列ができていた=黄宣真撮影

「日焼け止めを、しっかり塗ってくださいね。日傘や帽子も絶対に必要かな。4時間以上、待つ覚悟も、です!」「皆さんはブルーボトル『入城』に成功しましたか? 私は2時間待ちましたが、あきらめました。グッズを買おうとしたのですが、それにも時間がかかるときいて、帰ってきました〜」

その人気ぶりは、SNSで、こんなふうに表現されている。

この「ブルーボトル旋風」。きっかけは、実は日本だった。

ソウルにオープンする前、米国以外で、ブルーボトルのお店がある国は日本だけだった。その日本にも11店舗しかなく、スターバックスのように、中規模までの都市ならどこの街角にもある存在とはいえない。そんなブルーボトルの日本のお店に、韓国人観光客たちが数年前からこぞって訪れ、その姿をSNSで発信。またたく間に拡散し、大人気の観光スポットとなった。

韓国のインターネットで「日本旅行」と検索すると、ブルーボトルの東京1号店や京都店などを訪れ、ブランドイメージの水色のボトルの看板を背景に「インスタ映え」する写真がたくさんアップされている。韓国の旅行会社のツアーには、「京都のブルーボトルで一杯のゆとりを」といったパックツアーも登場した。

ブルーボトルの商品(東亜日報提供)

ソウルの1号店前に並ぶ韓国の人たちに、ブルーボトルをどこで知ったのか聞いてみると、10人のうち8人が「日本旅行で立ち寄ったホットな場所に、またぜひ来たくなった」と答えた。

ブルーボトルの最高経営責任者(CEO)は、韓国メディアとの最近のインタビューで、「実は韓国という国については、あまり知らない。しかし、ブルーボトルのインスタグラムの公式アカウントのフォロワーは3分の1が韓国の人たち。米国の店も日本の店も、韓国の観光客でいっぱいだ」と、韓国出店の理由について話している。

日韓関係は、歴史認識問題などで関係が悪化している。そんななかでも、日本に足を運ぶ韓国の人たちの流れは続いている。2018年に訪日した韓国人は750万人と過去最高になった。

韓国の人たちは今、日々の暮らしのなかで、日本の文化を何のてらいもなく受け入れている。

かつて韓国では、日本の大衆文化にかかわる本や映画などが禁じられていた。1990年代の後半、ようやく一部が開放され始めたころ、地下鉄の中で日本の小説を読んでいた私を、横に座っていた30代の会社員がこう非難したのを覚えている。「あなたは、どこの国の人なのか? 公共の場で日本語の本を読むとは何事か!」

それから20年以上がたった。韓国の大型書店には、外国小説のコーナーがある。そこのベストセラーのランキングの上位は、いつも日本の小説が占めている。

ソウル中心部の大型書店の外国語書籍コーナー。日本の書籍も並ぶ=黄宣真撮影

ただ、歴史認識は今もとても敏感な問題として、韓国社会でも大きく取り上げられる。私はブルーボトルのソウル1号店の前に列をつくる若者たちに、尋ねてみた。

「韓日関係が悪化しているのには、明らかな理由がある。『被害を受けたのだから謝罪してほしい』という人と、『もう全て終わった問題』と主張する人たちがいるのだから。でも、それぞれの国民が個人で解決できる問題ではないですよね。だから日本旅行をためらったことはありません」(28歳の男性会社員、黃先范さん)

「韓日の歴史問題を考えると、心は複雑です。でも、旅行する場所を選ぶ時に一番考えるのは、やっぱり費用です。1皿100円のおいしいすしが、日本ならば普通の回転すしで食べられますよね。韓国で同じレベルのすしを味わいたいなら、倍以上の値段がします。以前、韓国人観光客に、わざとワサビをいっぱい入れたという嫌韓のニュースが話題になりましたが、そういうお店には行かなければいい。グーグルマップと自動翻訳さえあれば、どんなお店でも見つけられます」(26歳の女性会社員、李惠圓さん)

長い行列を待ちに待ってコーヒーを楽しみ、お店を出てくる若者たちが目に入った。ふと素朴な疑問が沸いて、好奇心から彼らに聞いてみた。「『本場』」のコーヒーの味は、いかがでした?」。同じような答えが、みんなから返ってきた。

「本場って米国のことですか? 遠すぎます。日本の方が近いですよね」

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