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令和時代、人は「死」を意識しないようになる


医学はとてつもない速さで進歩を遂げています。いずれ人類は「不死時代」を迎えるかもしれません(写真:metamorworks/iStock)

ロケット級の進歩を遂げつつある医療。iPS細胞を利用して臓器をつくり出す再生医療や、AI医師の登場だけではなく、診断、手術、創薬、医療機器、救命救急、予防……。このまま医学が完成していけば、死の脅威をもたらす病気はほとんどすべて姿を消し、病気では人が死なない「不死時代」が到来すると、医学博士の奥真也氏は著書『Die革命――医療完成時代の生き方』で述べている。いずれ訪れる「不死時代」とはどのような未来なのだろうか。

がんを完封する時代がやってくる

平穏にすごしていた日々に、突然割って入るがん患者としての生活。幸せの絶頂の裏に忍び寄る糖尿病の影……。病気によって人生の予定が狂わされた経験を持つ方はたくさんいらっしゃるでしょう。でも、その状況は大きく変わろうとしています。

1981年に世界で初めて発見されたといわれるエイズは、当初は手の施しようがなく、絶望的な病気と思われていました。しかし、2000年を過ぎたあたりからHIVウイルスの働きを阻害するさまざまな薬が実用化されはじめ、現在では生命を奪う病気ではなくなっています。

エイズの薬のように派手に報道をにぎわせるものもあれば、目立たない進歩を遂げる薬もまた多くあるため、あまり実感がないかもしれませんが、成果を上げている例としては、タミフル、イナビルなど抗ウイルス薬によるインフルエンザに対する強力な治療効果などもそうでしょう。1回飲むだけでウイルスの増殖を抑えられるゾフルーザという進化した薬も世に出ました。

人類にとって最大の病魔の1つと言われているがんも例外ではありません。胃がんや大腸がんは、不治の病のリストから消えつつあります。乳がんや肺がんもそうです。がんの克服は確実に進んでいます。

2018年には、光免疫療法と呼ばれるがんの標的療法と、近赤外線による光化学反応を組み合わせた新しいがん治療の治験が日本でも開始されています。また、がん細胞に感染し、溶解させてしまうウイルスを使った薬は、数社が治験の先陣争いをしており、ほどなく世に出てきます。まさに今、がん治療の地図は大きく塗り替えられようとしているのです。

人類と病気との闘いについて話してきましたが、そもそも、いったいどうなれば、「病気に勝った」ことになるのでしょうか。ほとんどの方は風邪やインフルエンザなどの「治る病気」を思い浮かべ、病気とは治療をすれば治るものだ、とイメージしていると思います。

しかし残念ながら、病気の9割は治りません。医療の立場から言えば、必ずしも病気は治らなくてもかまわないのです。「たいていの病気は治癒しない」し、「治癒する必要はない」というのが医師の感覚です。

ほぼすべてのがん患者は、おそらく風邪などと同じように「がんが完治する」ことを期待していると思いますが、多くのがんは、「治療」はできても「完治」はしません。医者の立場からすると、「今よりも悪くならないようにはできるが、完治するとは言い切れない」と捉えています。

つまり、病気の9割は、医者にとってつねに「病気」というステータスにあります。完全に治癒しなくても日々の生活に支障がなければよい。医療はそこを目指しているのです。

誰もが「多病息災」で生きていく

ある病気と一生つきあうことになったとしても、その病気が牙をむき、身体に不具合を生じさせたり生命を脅かしたりしなければ困るわけではありません。この「ある病気とともに生きる」ことを一病息災といいます。では、一病息災は不死時代にどう発展するのかというと、その姿は、「多病息災」であると思います。

つまり、1つだけではなく、さまざまな病的な状態を持ちつつ、これらがどれも生命を脅かすことなく、生命との間に均衡を保っている状態。どの病気も、宿主である人間を殺してしまうところにまでは到達しないということです。

多病息災時代においては、つねに自らの中にいくつかの病的な状況があることを理解しなくてはいけません。それこそが人間の普通の状態なのだから、何も気に「病む」こともないのです。ただただ自然にそれを受容していればよく、多病がゆえに死ぬことなどないのです。

さて、「不死時代」到来の大きな立役者は、やはりテクノロジーです。テクノロジーによる医療の進化が近年はより本格化しています。

象徴的なのは、ロボットの導入です。例えば、1990年代にアメリカで開発された手術支援ロボットの「ダヴィンチ(da Vinci)」。現時点ではまだAI(人工知能)が搭載されているわけではありませんから、ロボットといっても人間が操作する機械にすぎません。でも、ここにはイノベーションともいうべき、かつてはなかった進化が起こっています。

たとえ話ですが、身体の硬い人が自分の肩甲骨を手で触るのは簡単なことではありません。同じようなことが外科手術にもあって、膵臓の裏側にある血管の縫合などは、大きく開腹したうえでほかの臓器の間をかき分け、そこまで手指をくぐらせて作業しなくてはならず、人間には困難な手術です。

でもロボットならば、人間の腕や手では不可能な角度からアクセスすることができ、うまく施術できます。切除の精度に関してもそうです。1ミリ幅の切除は、人間なら「神業」ですが、ロボットを使えばさらにその10分の1の幅でも安定して高い精度で切除できます。

よくニュースなどでは「ロボットが人間の代わりを務める」という表現が使われますが、少なくとも医療の場合は単純な代役ではありません。人間には到底できなかった水準のことをやってくれるのが医療におけるロボットなのです。

AI診断が人間を凌駕する

私たちはこれから、医療イノベーションの収穫期に入っていきます。ビッグデータの活用で創薬のプロセスが大きく変わったり、外科手術にロボットが導入されたりと、治療の方法論は大きな前進を遂げつつあります。


しかし、いくら治療の方法論が完成されても、そもそもの「見立て」が違っていたら克服できるものもできなくなります。医療の完成ということを考えると、あらゆる医療行為の出発点ともいえる「診断」において誤診をなくすことが最大の課題なのは言うまでもありません。

それにはどうすればいいのか。解決策として、最も有力視されているのがAIの導入です。2000年代に突入してコンピューターの計算性能がぐっと上がってきたことに加え、人間の脳神経回路をモデルにした多層構造アルゴリズムを用いて、着目すべき特徴や組み合わせをAI自ら考えて決定する「ディープラーニング(深層学習)」の技術が長足の進歩を遂げたことが重なって、AIが人間を凌駕する時代がやってきてしまいました。

それは医療AIについても例外ではありません。医師の「診察」「問診」はAIが十分に代替できる、ということです。というのも、AIは人間のように思い込みで病気を見逃すことはありません。疲労による判断ミスもない。むしろ、安定的に正確な診断ができます。つまり誤診率をかぎりなくゼロに近づけることができるのです。

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