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「ビアードパパ」意外と知られていないその全容


20周年を迎えた「ビアードパパの作りたて工房」。売れ行きNo.1店舗のウイング新橋店では、年商1億2000万〜3000万円を計上し、1日にして2000個のシュークリームが売れていることになる(筆者撮影)

家族へのお土産や、ちょっとした自分へのごほうびとして、真っ先に思い浮かぶスイーツ――。シュークリームは、そのトップ3に入るのではないだろうか。身近で、手づかみで気軽に食べられるところから、家庭的、懐かしいイメージも付随している。

その典型的なシュークリームのイメージを体現しているチェーンが、“できたて作りたて”シュークリームをうたう「ビアードパパの作りたて工房」だ。

2019年4月で20周年を迎えたというから、子ども時代に食べていた人も立派な大人だ。子どもからお年寄りまで、広い世代になじみのあるチェーンとして存続してきている。

ただ、目立つ黄色いロゴの看板をどの駅でも見かける身近さがある一方で、広告宣伝の露出は少なく、企業イメージは今ひとつぼんやりとしている。しかし国内では約200店舗、海外へもなんと14カ国約190店舗と、ワールドワイドな展開をしているチェーンなのだ。今回は、そのビアードパパに取材し、謎に包まれた実相について探ってみた。

20周年を迎えた令和時代での戦略は?

ビアードパパのシュークリームの大きな特徴は、サクサクとした食感があるパイシュー。また、店舗で注文を受けてからクリームを詰めるので、実演販売のイベント性および作りたてのフレッシュさが楽しめる。そのビアードパパを運営する麦の穂ホールディングスは、ビアードパパをメインに、スイーツのみならずうどんや串カツなど、11のブランドを展開する企業だ。

「定番のカスタードクリームのパイシューは170円という価格で、洋菓子店にひけをとらない味ということで、20年残ってきたという自負があります。とはいえ、近年ではコンビニスイーツも非常に品質が向上してきた。その比較のなかで、どう勝っていくかということも課題の1つです」(麦の穂代表取締役社長の杉内健吉氏)

ここ2〜3年の業績としては、売り上げは横ばい、店舗数は微増してきており現時点で206店舗。2013年に永谷園グループに参入し、全体として少しずつ右肩上がりの状況だ。もっとも繁盛しているのが新橋店で、年商1億2000万〜3000万円ほどとのこと。170円のシュークリームが1日に2000個近く売れていることになる。

「店舗数も増え、『わざわざ買いに行く店』から、『どこにあってもおかしくない店』のイメージが定着するようになりました。やはり、店前通行量の多い場所への店舗展開がメインになり、店舗のうち6割が東日本、なかでも首都圏に集まっています」(杉内氏)

「ところが一方で、広いスペースを確保できないという問題があります。店舗での洋菓子づくりでいちばん手間がかかってスペースをとるのが生地の製作過程。そこで、生地は大阪にある工場で作り、焼き上げる工程は店舗で行っています。これにより、狭い店舗スペースでも作りたてのフレッシュな商品を提供できます」(杉内氏)


同チェーンを運営する、麦の穂・代表取締役社長の杉内健吉氏(筆者撮影)

店舗での焼き上げ、そして注文を受けてからクリームを詰める実演販売方式は、同チェーンのパイシューのおいしさとも直接関係している。ふつうシュークリームはその名のとおりシュー生地にクリームを詰めたもの。シューは薄力粉、卵、バターなどを混ぜて練り、焼いて膨らませた生地だ。一方、同チェーンでは、パイ生地を使用した皮を採用。

アップルパイのような一般的なパイ生地は練った“たね”を、凍らせたバターを挟みながら何重にも折りたたみ、焼いてつくる。薄い生地が幾重にも重なり、間に空気が挟み込まれているから、独特のサクサクという食感が生まれる。

しかし、これだと、かじったときに生地が細かく割れてこぼれてくるので、シュークリームの皮としては食べにくい。

ビアードパパでは、サクサクとした口当たりを生かしながら、食べやすさも確保した「練り込み型」の生地を独自に開発。また焼き上げ工程で温度や湿度にも工夫することにより、シューの内側はもっちりしているのに、外側は時間が経ってもベタつかず、サクサク食感をキープできる生地に仕上げている。

「さっくりしているのがビアードパパのシュークリームの特徴。湿度によってサクサク感が失われてしまうので、その日に焼き上げた生地を使うことが大切です。直前までクリームを詰めないのは、水分を吸って食感が変わってしまうためでもあります」(杉内氏)

話題性を重視した企業とのコラボレーション

そんな、変わらない味を20年届け続けてきた同チェーンであるが、最近、ちょっとした変化も起きている。ユニークな季節限定商品や他社とのコラボ商品を次々に繰り出すなど、商品戦略において話題性・イベント性をより強く打ち出すようになってきているのだ。

一例として、3月には明治の「チェルシー」バタースカッチ味とコラボした限定商品を発売。20代など若い層では知らない人もいるというが、40〜50代には強くアピールするおやつとのコラボレーションで、非常に反響が高かったという。


一番人気は右端のカスタードクリームのパイシュー(170円)。そのほか季節や月ごとに限定商品が発売され、店頭には4〜5種類が並ぶ(筆者撮影)

また、4月1日には「永谷園のお茶づけシュー(250円)」を発売する予定とのエイプリルフールリリースを発信するなど、SNSなどを意識した話題作りも。

「商品のバリエーションが増えてきたのは、やはりグループ化後ですね。定番のカスタードのパイシューがいちばん売れますし、実際会社としてはこれが多く売れるほうがありがたい。

ただ、今の時代、おいしいというのはすでに当たり前です。選ばれるためには、『新しいものがある』『食べたときの感動や驚き』『もう1個食べたいと思う』などが必要。そのために季節商品などを取り入れています」(杉内氏)

定番商品は、パイシュー、クッキーシューなど2種類の生地に、店内で仕上げるカスタードクリームを詰めたものだ。また、2〜3カ月ごとに入れ替わる「季節のクリーム」を組み合わせることもできる。さらに、月ごとに入れ替わる期間限定商品が加わって、常時4〜5種類が店頭に並ぶ。店舗のスペースやオペレーションの関係上、一時期に販売する種類としてはこれぐらいが限度だという。


月替わりの商品は来店動機を高める重要なアイテムだ。写真は5月末まで販売中の熟成抹茶230円(写真:麦の穂)

ユニークなのが、この、月ごとの限定商品の顔ぶれだ。これまでの販売例を見ると、例えば1月の「贅沢いちご」、5月の「濃い抹茶」などは味も想像でき、普通だが、8月に「わらびもちシュー」、9月に「チョコチップメロンパンシュー」など、冒険的というか、挑戦的な商品が目につく。

この傾向は社内でも十分に意識してのことのようで、杉内氏によると、「目新しすぎても売れない。ある程度味を知っていて、興味をひくということが重要なんです。“ちょうどいい”と社内では表現しているんですが」(杉内氏)とのこと。

最近、ちょうどよかった商品は今年2月に発売した「焼きチョコシュー」。チョコレートをかけて二度焼きした生地に、チョコレートクリームを詰めたもので、味が想像でき、なおかつ食べてみたいという欲求を起こさせる。一方、わらびもちシュー、メロンパンシューは初年度に出したときは「はずした」(杉内氏)そうだ。

同社では、味に関する評価・意見のほか「また来店したいと思うか」などを購入客に問うアンケートを行っており、結果を非常に重視して商品開発を行っている。わらびもちシューやメロンパンシューは、味の評価は高かったものの再来店動機の点が低かったのだそうだ。とはいえ、評価が分かれた商品を外してしまうのではなく、よりブラッシュアップして再販売するところに、同社の職人魂のようなものを感じる。

「毎月違う商品があるということで、お客様に楽しい買い物体験をもっていただくのが狙いです。リピートにもつながり、楽しみにしていらっしゃるお客様も。先日も『昨年5月に出たかりんとうシューは今年も発売されますか』というお問い合わせがありました」(杉内氏)

なお、月替わりの商品については230円と、価格が若干高めに設定されている。

客層の弱みをコラボ企画で打破

20年の実績があり、幅広い年代層の支持がある同チェーンだが、メインとなっている客層は30〜40代。つまり、20年前に子どもだったり、小さな子どもを持つ親だった人たちで、その後、家族で食べ続けていることになる。

一方で弱みと言えるのが10代後半から20代前半の若年層だそうだ。彼らが子どもだった15〜16年前には店舗数が約240店舗ともっとも多い時期で、当たり前のように存在していることが逆に、認知度を低くする原因となっていると杉内氏は分析する。コラボ戦略は、そのあたりの層を耕す意味でも有効だと見ている。

コラボの第1号は2018年7月に発売した、サンリオの「ぐでたま」。これがきっかけで、コラボにも意欲的との印象が広まり、さまざまな企業から声がかかるようになったという。

同時期に行った知育玩具LaQとのコラボも、反響が高かったそうだ。LaQのおまけが購入動機につながっただけでなく、商品に工夫し、クッキーシューの皮をゴツゴツとした凹凸のある卵形につくって恐竜の卵に見立てたり、店舗内装やポスターなどの販促物もガラリと印象を変えたことで、強くアピールしたという。

「LaQは集めている子どもさんが多いんですね。シュークリームとのセットで買えば書店などで購入するよりおもちゃが安く手に入れられる、ということでお母さん方の間で情報が広まったのも大きかったです(笑)」(杉内氏)

さて、同社の展開において不思議なのが、海外店舗の多さだ。アジア圏を中心に、国内とほとんど変わらないぐらいの店舗数を広げている。これにはどういった意図があるのだろうか。

「アメリカとシンガポールの直営店のほかはすべてフランチャイズです。地域ごとに置いたエリアマスターの元でそれぞれフランチャイズを行ってもらっている形です。日本の食文化やスイーツはアジアで非常に高く評価されています。

若干高い所得層がメイン層になっており、価格も現地の相場から考えて、日本より高めの設定にしています。その層の人口が今増えつつあるということが、アジアで広がっている理由の1つですね」(杉内氏)

海外展開でも国内と変わらないクオリティを提供

海外展開の第1号は、2001年にオープンした香港店。国内での展開を拡大する時期に、すでに海外へも歩を進めていたことになる。その後もスピーディに広がっている理由としては、オペレーションのシンプルさが第一に挙げられる。パイシュー生地は工場で作り、店舗で焼き上げるという方式をそのまま海外でも採用している。クリームも専用の機械で作ることができるため、国内と同様の品質を確保できるのだという。

日本のスイーツも、工場で作った焼き菓子をそのまま販売するような店舗はあるが、作りたてというのはほかになく、同社の大きな差別化につながっている。ただ、味覚の違いへの対応はどうしているのだろうか。

「生地やクリームについては、味を変えて出したいという要望もあることはあります。でも、当チェーンそのままの味を大切にしてくれるところと契約を結んでいます。定番商品については世界共通。ただ、個々のローカルな味については、中身のフレーバーで提供いただくのはOKとしています」(杉内氏)

そのなかでも最もローカル色が強いものと言えば、ドリアンシューだろう。ドリアン風味のシュークリームは日本人には想像がつかないが、東南アジアの広い地域で、欠かせないフレーバーの1つであるようだ。また、海外のローカル味が日本にフィードバックされたものもある。先に挙げた「恐竜の卵」の生地は、シンガポールで人気の商品をヒントに開発されたものとのことだ。

以上のように、安定した定番商品に加えて、コラボや話題性の高い商品づくりで若年層の掘り起こしに力を入れる一方、ある程度基盤がしっかりした海外展開が、同チェーンの今後の戦略になっていくようだ。


2018年10月から、同社が運営を始めたのが「吉祥菓寮」。写真は人気商品の焦がしきな粉パフェ1188円(写真:麦の穂)

また、最近グループのブランドに加わった「吉祥菓寮」も反響が大きく、今後の広がりが期待されているという。吉祥菓寮は江戸時代までルーツをさかのぼることができる京都の老舗、「京都吉祥庵」が展開する店舗。

麦の穂と2018年10月に合併することで、同グループの傘下に入った。素材にこだわったきな粉や、本わらび100%のわらび餅が同社のスイーツの特徴となっている。京都内に、飲食できるカフェ形式の店2店舗、ギフトショップ3店舗を展開しているが、杉内氏によると、来年2020年には東京でのオープンを予定しているそうだ。

この新たな動きが、同社のメインであるビアードパパのチェーンにどう影響してくるのか。例えば現在も、年配の世代を意識し、月替わりの商品には、和の風味を取り入れた商品を年に1〜2回採用しているという。「吉祥菓寮とのコラボ」がもし実現すれば、話題になりそうだ。

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