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「喫煙者は採用しません」長崎大が宣言、「喫煙者差別」は憲法違反になる?

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長崎大学が4月19日、今年度からの教職員採用で、喫煙者の採用を見送ると発表した。こうした基準を設置するのは、国立大学としては全国初とみられる。

長崎大学は2018年11月にも「禁煙実践宣言」を発表、学生や教職員らの健康増進を目的に今年8月から全てのキャンパス敷地内での禁煙を実施する。今回の喫煙者の採用見送りもその一環で、すでに公開している募集要項には、「喫煙する方の採用は見送らせていただいております」と明記されている。

この方針に、ネットでは賛否両論がわき起こった。「差別であり、人権侵害だ」という批判の声が上がる一方、「タバコは嗜好ではなく依存症」「医療従事者を養成する大学として当然」という賛同の声も寄せられた。

文科省の国立大学法人支援課では、「各法人の意思に基づいて、採用基準は決まっている。文科省として調査をしたことはないが、前例を聞いたことがない」と話す。近年、民間でも喫煙者の採用を見送る企業や団体が増えているが、果たしてタバコを吸う人を雇用しないことは、「差別」や「人権侵害」にあたるのだろうか。

●民間企業の採用では「喫煙者お断り」が拡大

文科省によると、学校敷地内の全面禁煙措置を講じている学校は増えている。学校は公共の場であり、未成年への受動喫煙被害を防止するなどの目的で、2005年には45.4%だったが、2017年度までには90.4%にまで増加した。さらに、2020年の東京五輪を控え、2018年7月に改正健康増進法が成立、2019年7月1日からは学校の敷地内はすべて禁煙となる。

長崎大でも施行に先駆け、今年8月1日からキャンパス内は全面禁煙となる。4月からは、教職員の採用の募集要項にも、「受動喫煙から学生と教職員を守るために、喫煙する方の採用は見送らせていただいております。なお、採用後の禁煙を誓約していただける場合は、この限りではありません」と明記している。

すでに、民間では「喫煙者の採用見送り」が広がっている。旅館や温泉施設などを運営する星野リゾート、医薬品製造のファイザーやロート製薬、スポーツクラブ運営のセントラルスポーツ、病児保育を手がけるNPO法人フローレンスなどが知られている。そこまで厳格でなくとも、社内を禁煙にして社員の「卒煙」に取り組む企業は増えている。

最近でも、保険会社の損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険も新卒採用で、2020年4月入社の新卒社員の募集要項に「非喫煙者であること」などと明記したと4月10日に発表。禁煙を促進する23の企業や医療関係団体などは4月18日、「禁煙推進企業コンソーシアム」を発足させるなど、動きは加速している。

●もしも裁判になったら、喫煙者は勝てる?

一方、喫煙者を中心に「差別だ」という声も根強い。長崎大学の方針にも、「タバコを吸う、吸わないは個人の嗜好であり、大学が踏み込む問題ではない」という反論がネットには上がった。では、憲法の立場からはどう考えればよいのだろうか。多くの憲法訴訟に携わってきた作花知志弁護士に聞いた。

「これは、とても難しい問題だと思います。喫煙の自由を問う問題が、司法試験の論文式試験の憲法の問題として出題されたこともあるほどです」としながらも、「客観的な立場から、実際に裁判になった場合を念頭に考えると、『憲法違反だ』という判決を獲得することは、なかなか難しいように感じています」と語る。

その理由とは?

「まず、『喫煙権』は人権なのか、という問題があります。憲法13条が保障している幸福追求権から派生する人権だ、と言えなくもないとは思いますが、その場合でも、当然に全ての場で『喫煙権』が保障されるわけでないと思います。

と申しますのは、タバコの煙から周囲の方が害を受ける受動喫煙の問題もあると同時に、喫煙後、服やカーテンなどに何らかの形で残ったタバコ残留物から有害物質を吸い込んでしまう『三次喫煙(サードハンドスモーク)』の問題も指摘されているからです。

つまり、タバコの問題は、単純に『分煙すればいい』ということにはならない、ということです。自宅で父親だけが喫煙者の家がある場合、父親がベランダでタバコを吸って部屋の中に戻って来た時も、その『第三次喫煙』の問題が生じることになります。その点が、『単なる嗜好の問題』とは言えないところの難しさです」

●大学側には「安全配慮義務」も

大学ともなれば、教職員の他にも未成年の学生も含まれる。

「大学側には、教職員や学生、全ての方に健康なキャンパス生活を保障する責任があるわけです(大学の安全配慮義務)。その責任からすると、喫煙者を採用しないことが、憲法13条に違反する、という判決は出にくいのではないかな、と思います。同様に、憲法14条1項が保障する法の下の平等の問題についても、同様な思考から、憲法違反の判決は出にくいように思っています」

また、今回は国立大学の話だ。国立大学法人法第19条では「みなし公務員」とされている。民間企業とはどう違うのか。

「この問題は解釈問題であり、私が以前、公立の福岡女子大から願書を受理されなかった男性の訴訟を担当した際にも問題になったのですが、現在の国立大学法人における学生や教職員と大学の関係は、基本的には私立大学と同じ契約関係とされている、という資料が訴訟で証拠として提出されていました。国立大学法人法19条は罰則の適用の規定なので、それから当然に採用について公務員と同様、ということにはならないのではないか、と思います」

さらに、作花弁護士は、こうも指摘する。

「私個人としては、喫煙権の問題は、人権そのものというよりも、個人的な嗜好であり、個人生活上の利益として存在しているように思います。そうなると、喫煙者を採用しない、という問題も、憲法問題ではなく、大学や企業の裁量権の問題であり、裁量権の逸脱や濫用がなければ違法にならないのではないか、と思います。

ただ、個人的には、『喫煙権は人権であり、それを制限することは憲法違反だ』という主張を行う憲法訴訟の御依頼があれば、依頼者の方とご一緒に挑戦してみたい気持ちはありますね」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属。
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/

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