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なぜセブンイレブンの近くにセブンができるのか

(中嶋よしふみ FP・シェアーズカフェ・オンライン編集長)

 コンビニのビジネスモデルとは、「無駄になっても良いから24時間営業と物量作戦で自社の売り上げを増やして、他社の出店と売り上げを妨害し、利益を最大化する。かつ、事業リスクを外部に移転するため、フランチャイズ制を採用する」ことにある、と前回の記事『なぜセブンイレブンはこれほど嫌われるのか?』では指摘した。そして、このビジネスモデルを最も厳格に追求しているのがセブンイレブンだ。

前回記事:なぜセブンイレブンはこれほど嫌われるのか?http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56201

 ここまでして規模の利益、店舗数と売り上げの追求は正しいのか? まずは数字を見てみよう。

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コンビニ各社が繰り広げる「陣取り合戦」

 店舗数と1日あたりの売り上げ(日販)はほぼ比例している。セブンイレブンの日販は平均で約65万円と、ファミリーマートの52万円、ローソンの53.6万円に比べセブンイレブンは突出して高い。そして統合前のサークルK・サンクスは日販がファミマより10万円も低かった。少なくとも利益追求の面で規模の利益は正しい。

 戦国時代を舞台にしたシミュレーションゲームでは、城を攻め落として陣地を拡大し、日本全国を支配すればゲームクリアとなる。コンビニビジネスは城の代わりに店舗が拠点だ。弾幕を張って他社を攻撃・妨害して、規模の利益を追求するために買収と合併で同盟を結ぶ。前回から長々と説明したが「コンビニのビジネスモデルは弾幕と陣取り合戦」と説明すれば一言で終わる。

「弾幕」とは、戦争で多数の弾丸を撃って敵を近づけなくするのと同じように、コンビニが店の数、品揃え、24時間営業で他社を寄せ付けないようにする戦略のことだ。

 前社長は過去のインタビューで「陣取り」が成功した地域について以下のように説明している。

<店舗数が増えれば本部が受け取るロイヤルティーの合計額は増えますが、セブンイレブン同士が競合して、それぞれの加盟店の売上高は減るのではありませんか。

古屋:よくそれは言われます。ただ、地域におけるセブンイレブンのシェアが35%を超えると、一店一店の日販(店舗あたりの1日の平均売上高)は上がるんです。ですから、いま我々が地域シェアを60%近く取っている栃木県や群馬県、山口県や福島県では、日販が70万円近くにのぼります。あまり大きな経済圏ではないのに、全国平均を超えているんです。

(セブンイレブン社長「24時間営業は絶対続ける」 日経ビジネス電子版 2017/11/06)>

 人口の少ない地方で日販が高い状況は一見すると不思議に見える。しかしこれも弾幕で他社の追い出しや進出阻止に成功して、地域のコンビニ需要を独占していると考えれば予定通りの結果だろう。ただし途中経過を見れば過去に血みどろの戦いと、そこで破たんしたオーナーがいたとしてもおかしくない。セブンイレブンに限らず各社の理想は、独占状況で店舗運営をすることだ。

 ただし、独占を維持するために緊密なドミナント出店が行われるため、独占状態が必ず儲かる状況を生むわけでもない。セブンイレブンの日販は他社と比べて高いとはいえ横ばい傾向にあり、一方で近年は毎年1000店ほども店舗数が増えていた。

 この状況から分かることは、既存店の日販を目安にドミナント出店の可否を決める、つまり日販が高い=出店の余地がある=他社に売り上げを取られるくらいなら自社で取れ、といった判断をしているということだ。
 
 セブンイレブンにとっては当たり前の経営判断だが、オーナーにとってはたまったものではない。コンビニ各社は具体的な距離は明記していないものの、近隣に出店する際には配慮する、といった契約を結んでいるがそれにも反している。

セブンイレブンが嫌われる理由

 コンビニ各社はオーナー希望者向けの説明会で、こうした身も蓋も無いビジネスモデルをハッキリと説明していれば良かった。

「24時間営業とドミナント出店で他社の追い出しに成功すれば儲かる可能性が高まります。しかしそこに至るまでは血みどろの戦いです。何年続くかわかりませんし、勝てるかも分かりません。失敗すれば経営が破たんするかもしれません。それで良かったらオーナーになってください」と。

 こんな説明でオーナーになりたい人はまずいないと思うが、人生をかけた起業・独立を勧める以上は誠実で嘘の無い説明が求められる。

 ドミナント出店についてセブンイレブンはいまだに知名度や配送効率が云々といった説明をしている状況を見ると、このようなビジネスモデルを説明したくないのか、それとも自社のビジネスモデルを経営者ですら理解していないのか、心配になるレベルだ。

 そしてセブンイレブンが嫌われる理由、批判される理由は今回の記事で書いたように、ビジネスモデルが「誠実ではない」からだ。他社を妨害して自社のチェーン同士でも共食いが発生するような手法を誠実とは到底言えない。

 本来ならばフランチャイズ契約は契約自由の原則で、違法でなければ問題なし、あとは当事者同士の話※、ということで終わっていたはずだ。しかし合法と誠実は全く別の話で、セブンイレブンは結果的にこれだけ批判を受け、嫌われている。味方がいないように見えると書いた通り、オーナーに限らず顧客からもだ。

(※ただし、後述するようにオーナーの労働組合結成が一時的とはいえ正式に認められたことで「当事者同士の話」では通用しない可能性が出ている)

ネットとSNSで企業の裏の顔が可視化された

 従来は企業が裏側で何をやっていようと誰も気にしなかった。しかしインターネットとSNSであらゆることが可視化されると、ブラック企業の実態や食品の大量廃棄など、多くの人が違和感を覚えていたものが容易に目に入る。場合によっては安くて高品質な商品が誰かの犠牲で生まれていることまで見えてしまう。

「違法ではないが問題のあること」

 これをどう扱えばいいか? 「問題のあること」は、モラルに反すること、嫌なこと、不快なこと、腹が立つことと言い換えても良い。SNSが短期間で急激に発達した現在、これは答えの無い問いとして世界中の企業にのしかかっている。

 国内では女性をネタにした広告が度々炎上しては、広告主の大企業が謝罪に追い込まれた。海外ではバーバリーが大量の在庫廃棄で批判を受けている。いずれも違法行為ではないが、金儲けのために不快なことやモラルに反したことは許されるのか?という従来のコンプライアンス(法令順守)よりさらに進んだ、そして全く異なる対応が求められる。

 近年CSR(企業の社会的責任)やフェアトレード、エシカル等のキーワードが聞かれるようになった理由も、平たく言えば「キレイに儲けているのか、汚く儲けているのか」について、消費者が以前よりもはるかに敏感になったからだ。

 レピュテーションリスク(評判の低下で業績が悪化するリスク)とも言われるが、要するに「炎上しないように気をつけて経営しましょう」という話だ。セブンイレブンはそのリスクに鈍感過ぎた。

 今でも経営陣は「違法行為はやってないのになぜこんなにうちだけ叩かれるのか? ビジネスモデルは何十年も前から変わっていないのに!」とトンチンカンな認識でいるかもしれない。だからこれだけ嫌われ、批判にさらされながら今なおまともに対応できずにいる。

 炎上リスクを考慮して会社を経営する――ネットとSNSの存在を考えれば必然的な流れと言えるだろう。

「今回の騒動でコンビニのビジネスモデルが論じられていない」と前回書いたが、法的な側面もほとんど論じられていない。

 フランチャイズビジネスを実質的に規制している独占禁止法の観点、労働組合の結成が一時的とはいえ認められたオーナーの労働者性、そしてセブンイレブンの社長交代前後で語られた24時間営業を止めたいお店は「80店」あるいは「96店」という謎の数字などの側面だ。

 筆者の「オーナーは経営者なのだからトラブルが起きても自己責任ではないのか」という認識が大きく変わったきっかけがオーナーの労働者性だが、ここは特に重要な論点となる。これらの問題については稿を改めて言及したい。

※筆者はコンビニ各社について、過去のアルバイト勤務と消費者としての利用を除いて、各種取引、株の保有(過去も含めて)、把握する範囲で親族の勤務等の利害関係が無いことは明記しておく。

筆者:中嶋 よしふみ

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