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米国の大学に押し寄せる中国人は、金の卵かスパイか

超有名大学スキャンダルの陰であまり目立たなかったが、英語力テストの不正で中国人6人が逮捕された


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大学不正入学スキャンダル
セレブは私立名門校、中国人は公立名門校

 ハリウッドスターや投資会社CEO(最高経営責任者)などを顧客に子弟を名門大学に裏口入学させていた裏口入学斡旋業者(自称、進学指導経営)が逮捕された。

 米メディアは「史上最大の不正入学スキャンダル」と騒いでいる。

 一言でいうと、受験の答案を書き換えさせたり、名門校が運動選手を優遇する「スポーツ奨励制」を悪用し、運動部のコーチを買収してスポーツの実績を水増しさせて子弟たちを裏口入学させていたのだ。

 業者は総額2500万ドルを懐に入れた。収賄、司法妨害など有罪判決を受ければ最高禁固10年、罰金25万ドルが科せられる。

 対象となった大学は、イエール、スタンフォード、ジョージタウン、南カリフォルニア(USC)といった私立の名門中の名門。

 確証はないのだが、筆者が何度か聞いた噂がある。米名門大学の中には、大学への施設寄付など「大学の地位向上への貢献」した親の子弟や親が同窓の子弟の入学には一定の便宜を図っているという。

 また今や大学スポーツは花盛り。大学チームがフットボールやバスケットボールで活躍すれば、それだけ知名度を上げることができる。

 それだけ志願者も増えるし、愛校心に目覚めた同窓生からの寄付が増加する。テレビ中継料や入場料収入も期待できる。大学がスポーツに力を入れるのは当然だ。

悪徳コーチの中にはオバマ一家のテニスコーチも

 そこでできるだけ優秀な運動選手を獲得しようとする。

 スポーツ特待生奨学金や学費免除などをちらつかせてスカウトする大学はざらだ(このあたりは日本でも甲子園常時出場高校などと同じだ)。

 また名門校でもスタンフォードなどは「一芸に秀でた学生」を正規の枠とは別枠でスポーツ選手を入学させる学校もある。

 つまり今回のような「大学入学を巡る過去最大のスキャンダル」(ニューヨーク・タイムズ)を生む土壌は昔からあるのだ。

 今回の手口の一つは、特定のスポーツの大学コーチを買収し、一般入試では到底合格できないような運動能力しかない受験生に下駄を履かせて優秀運動選手枠で裏口入学させていたこと。

 だが、ここまで大規模な収賄事件が露呈するとなると、当該大学にとっては伝統も名声もあったもんではない。

 スキャンダルの余波は広がっている。これらの大学に入ろうとして不合格になった志願者の家族が当該校を相手取って集団訴訟を起こしている。

 「セレブがカネを使って成績の悪い子弟を大学に押し込んだ結果、当然合格していた自分たちの娘息子が入学できなかった。大学当局の責任は重い」という訴訟だ。

 今回の不正入学スキャンダルで注目されるのは、親たちの大半が民主党支持層でリベラル派であることだ。

 逮捕されたコーチの中にはバラク・オバマ前大統領の娘たちにテニスをコーチをしていたジョージタウン大学の黒人コーチもいた。

 裏口入学には保守派もリベラル派もないのだ。保守系メディアは、鬼の首でも取ったような喜びようだ。

 「民主党のリベラルは教育の平等だ、貧富の格差是正だと言いながら実際には娘息子をカネで名門校に不正入学させようとしていた。偽善そのものではないか」(保守派コラムニストのトミ・ラーレン氏)

(https://insider.foxnews.com/2019/03/14/tomi-lahren-college-admissions-scandal-hypocrisy-hollywood-elites)

セレブの裏口入学は20万ドルから650万ドル
中国人の「替え玉受験」はたった400ドル

 ところがこのセレブ名門校不正入学スキャンダルが大々的に報じられた3月13日、大学不正入試でもう一つのスキャンダル事件が公になっていた。

 セレブ不正入学に比べると、報酬額も少なく、規模も小さい。そのため米メディアは大々的には報じていない。

 しかも不正入学を周旋、加担したのが名門大学の関係者やコーチではなく、収賄したのがセレブではなく、言ってみれば、地位も名もない中国人だった。

 米国土安全保障省傘下の米市民権移民局(USCIS)が同日、発表したリリースは以下のようなものだった。

 「米司法省当局は、学生ビザを取得しようとしていた中国国籍者に代わって『外国語としての英語能力検定試験』(TOFEL)を受けるために人を雇う陰謀の件で5人を逮捕した」

 逮捕された5人はいずれも米国在住の中国人。全員中国籍。首謀格のリュウ・カイ容疑者(23)はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)を卒業している。

 他の4人は23歳から24歳の男3人、女1人。逮捕状はもう1人出ているが、その男(33)は現在台湾に住んでいるとされている。いずれも米大学に留学した経験がある。

 5人の手口は、米国留学を目指す中国在住の若者たちの旅券を偽造、彼らに成りすましてオンラインでTOFEL試験を受け、合格に必要な成績を取り、それを基に志望する大学の入学許可を取得するというもの。

 このための費用として1人当たり400ドルを請求していた。セレブの不正入学とは支払い額では雲泥の差だ。

 カオ容疑者の場合は、2015年から2016年の間に14人の中国人になりすまして替え玉受験していたという。6人がこの手口で40人の中国人を入学させていた。

(https://www.uscis.gov/news/news-releases/5-arrested-scheme-hired-people-take-english-proficiency-exam-behalf-chinese-nationals-seeking-student-visas)

年間8000人の中国人留学生が退学

 こうしたTOFELを巡る不正行為は今に始まったわけではない。

 2015年にはペンシルバニア州立大学ではTOFEL受験で不正行為をして入学していた中国国籍留学生15人がいたことが発覚し、米連邦検察当局が起訴。

 2016年にはオハイオ州立大学で中国人留学生が受験不正行為を働いていたことが発覚して起訴された。

 同じくカリフォルニア大学アーバイン校とアリゾナ州立大学でも、TOFEL替え玉受験をしていた中国人学生が起訴されている。

 まさに中国人による不正受験は「年中行事化」していた。

 対象となる米大学は、「1年間にベンツが1台買えるほど授業料(年間約5万6000ドル)がかかる」(父兄の一人)私立大に比べ、授業料が格段に安い(年間約1万4000ドル)州立大学だった。

 不正入学を請け負った中国人たちは、1人から400〜1000ドルの謝礼を受けていた。懲役5年、罰金25万ドルの判決を受け、刑期終了後は国外永久追放だ。

 もっとも、こうして入学した全く英語力のない中国人留学生が大学でまもとに授業を受けられるはずもない。

 毎年8000人以上の中国人留学生が入学後も続けるカンニングや論文盗作など不正行為や成績不振で米大学から退学処分されている。

 これは米国に拠点を置く中国語サイト「博訊」(ボシュン)が報じている。

 中国人の替え玉受験は何も米大学入試に限ったものではない。中国で毎年行われている「全国統一大学入試」(高考)でも受験生になりすまして替え玉受験するケースが頻繁に起こっているという。

中国人理系に「学生の衣を着たスパイ」

 中国人が「米大学に留学して箔をつけたがる“雑魚”」だけなら米司法当局がこれほど血眼になって不正入学を捜査はしない。

 「雑魚」をとっ捕まえて国外追放すればいい。

 しょせん、資金難で学校経営が苦しい米公立大学が過去10年間、授業料を全額出してくれる中国人留学生を必死になってリクルートした結果、中国から「雑魚」を集めすぎた代償ともいえる。

 問題はなぜ、中国人の若者がそれほど米大学に入りたがるのか、だ。

 中国事情に詳しい米国務省関係者によれば、米留学を希望する中国人には2種類あるという。

 一つは、北京大学など中国のエリート校に入れなかったもの。米大学を出て箔をつけて帰国し、政府や中国共産党の要職に就こうとする若者だ。

 もう一つは、中国のエリート校を卒業し、さらに大学院で専門分野を極めようとする学者の卵やすでに博士号を取得し、米国の先端技術を学ぼうとする研究者たちだ。

 米司法当局が狙っているのは後者だ。

 ドナルド・トランプ大統領は、2017年12月、「国家安全保障戦略」(National Security Strategy)と銘打った大統領令を発令した。

 その一項に「米政府は、知的所有権を有する研究分野を保護するために指定された国から留学しているSTEM(科学・技術・工学・数学の教育分野)専攻学生に対する制約を検討する」という項目が盛り込まれた。

(https://foreignpolicy.com/2017/12/18/five-takeaways-from-trumps-national-security-strategy/)

 「指定された国」は言うまでもなく中国を指している。

 この大統領令を受けて、米政府はそれまで5年間の有効期限だった中国人大学院留学生のビザ期限を1年に短縮する一方、博士号を取得後、米国内の研究所、機関で働いている中国人に対する永住権取得を容易にする方策を打ち出している。

 こうしたトランプ政権の中国人学生対策の基本方針は、反中国強硬派のステファン・ミラー大統領補佐官兼主席スピーチライターの発案とされる。

 同補佐官は、中国人留学生が米研究機関から先端科学技術を盗み出し、それを本国に持ち帰っていると主張してきた。

 同補佐官の主張は、「米国の知的所有権窃盗行為に関する委員会」がまとめた実態調査からも裏づけられている。

(http://www.ipcommission.org/press/IPC_press_release_030818.pdf)

 ところが、中国人のSTEM専攻研究者に対する制約強化案には米国内でも反対する声が出ている。

 米国際戦略問題研究所(CSIS)やイエール大学の研究者たちの主張はこうだ。

(1)中国人留学生を十把一絡げにしてスパイ扱いすれば、中国共産党・政府の反米宣伝を煽るだけだ。

(2)中国からの留学生は米中交流促進に役立っている。

(3)中国からの優秀な研究者たちは米国の科学技術強化に貢献している。

(4)中国からの留学生36万人は米大学経営にとっては重要な財源となっており、そのうち8割から9割は学位取得後米国に残る意思表示をしている。

(https://defense360.csis.org/bad-idea-banning-chinese-students-from-studying-in-the-united-states/)

(https://yaledailynews.com/blog/2018/11/30/federal-scrutiny-on-chinese-students-causes-campus-concern/)

 中国人留学生を巡るスキャンダル事件とトランプ政権の対中国人学生対応策。米中の国家安全保障・通商摩擦を絡み合いながら複雑な実情も浮き彫りになっている。

筆者:高濱 賛

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