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英国最高の宅配ドライバー 82歳の元タクシー運転手 まだまだ現役

@AUTOCAR

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もくじ

ー 配達は大雪のなか 人助けまで
ー 報われた献身 レストランの顔
ー ナビは不要 クラッチが弱点
ー お気に入りはキャバリエ まだまだ現役

配達は大雪のなか 人助けまで

多くが「東からきた魔物」と呼ばれた大寒波に凍えていた2018年2月のあの夜、ある家族は「東からくるご馳走」の到着をいまや遅しと待っていた。チキンのカレー炒めと香辛料で味付けしたライス、そして2枚のナンと付け合わせのピクルス。

大雪のなかわざわざカレーを届けたくれたこの勇敢な宅配ドライバーが玄関先で凍えながらこの大切な届け物を手渡しても、受け取りにでた男の態度は横柄で「もし冷めていたら払わないよ」と宅配の入った袋を受け取りながら男は言った。


男が乱暴にドアを閉めようとしたとき、妻と娘が出てきて真っ青な顔をしたドライバーをじっと見つめると、「なんてこと。さっき雪のなかでクルマが故障したときに助けてくれた人だわ!」と彼女は叫んだのだ。

「この人は次の配達に間にあうギリギリのところまで、わたし達を家の近くまで運んでくれたのよ」と娘が言った。「彼はヒーローよ!」

この話を聞いて、ようやく自らの非礼を恥じた男だったが、宅配ドライバーに礼を言おうと思った時にはすでに手遅れだった。常にヒーローがそうであるように、この宅配ドライバー、ブライアン・ローガンズは男からの言葉を待つことなく猛吹雪のなかをクルマへと戻るところであり、彼の頭のなかはガスストーブの前でお腹を空かしながら待っている次の客のもとへカレーを届けることで一杯だった。

報われた献身 レストランの顔

だが、ブライアンの宅配ドライバーとしての献身と、良きサマリヤ人の如き行いは報われている。昨年12月にロンドンのサボイホテルで開催された華やかな授賞式で、82歳のブライアンは、他の5人のファイナリストを退けて、英国最高の宅配ドライバーの栄誉に輝いたのだ。

「ブライアンは宅配のカレーと顧客の奥さんを配達することになったのです」とプレゼンターのデビッド・ウィリアムズは受賞の理由を説明している。「彼は一度も欠勤することなく、おそらくは英国でもっとも高齢の宅配ドライバーでしょう」

ブライアンはウエスト・ヨークシャーのソワービー・ブリッジにあるキプリングスという名のレストランで3年前から宅配ドライバーとして働いている。ある晩、ひとりのドライバーが姿を現さなかった後で、レストランのオーナー、ムハンマド・ラフク、通称ラフから声を掛けられたのだ。


「ブライアンはこの辺りで40年もタクシードライバーをしていたんですが、ときどき店にチラシを届けてくれていたんです」とラフは言う。「彼はこの辺りに詳しいので、非常に頼りになるのはわかっていました。ナビも彼には必要ありません。ですから、是非助けて欲しいと頼んだのです」

「彼に声をかけて正解でした。ブライアンは常に礼儀正しく、スーツにタイを着用していますから、店の顔としても申し分ありません。最高の料理を作ることはできますが、ブライアンが届けてくれることで、お客様に満足をしていただけるのです」

これまで苦労をしてきたヨークシャー生まれの82歳と聞いて想像するとおり(TV修理から始まり、タクシードライバーと電話帳配りで生計を立てていたのだ)、どんな注目も彼には関心がない。「賞を頂いたことは光栄ですが、目立つようなことは好きではありません」とキプリングスのレストランで会った彼は言う。「やるべきことをやっただけです」

ナビは不要 クラッチが弱点

ある時は161km以上の距離を走ってウエスト・ブロムウィッチの客のもとへ配達したこともあった。「家族の大きな集まりでした」とブライアンは話す。「お客様はかつてソワービー・ブリッジに住んでいたので、キプリングスのことをご存知だったのです。250ポンド(3万6000円)の料理の配達に200ポンド(2万9000円)をお支払い頂きました」

ブライアンの年齢を考えて、レストランでは彼が働きたいときに働けるようにしている。週に約10時間働いて60回ほどの宅配業務を行うが、そのほとんどが8km以内の距離だ。「ナビは使いません」とブライアンは話している。「もし道がわからなければ、窓を開けて誰かに訊くだけです」


ブライアンが現在宅配に使っているのは、1年前に1500ポンド(21万5000円)で手に入れた、2007年登録の1.8ℓハッチバックモデル、ヴォクゾール・ベクトラだ。走行距離11万kmでブライアンのもとにやってきたこのクルマは、その後の12カ月でオドメーターの距離を14万5000kmにまで伸ばしているが、すべてが宅配業務でというわけではない。ブライアンはラジオを通じたチャリティーを行っているボランティア団体、Revcomのためにも運転しており、南はサマセットまで行くこともあるという。

「ベクトラは非常に丈夫ですが、わたしが手に入れてから2回クラッチ交換を行いました。その理由は謎です」と彼は言う。その直後、写真撮影のために少しバックしてもらうと、その間クラッチは滑りっぱなしだった・・・。

さらに、ブライアンはかつて所有していたキャバリエであれば20分でクラッチ交換を完了することができたと言い、「キャバリエは修理が非常に簡単でした。これはタクシー運転手にとって大事なことなのです」と話してくれた。「キャバリエのクラッチプレートは35ポンドでしたが、ベクトラは250ポンド(3万6000円)もします」

お気に入りはキャバリエ まだまだ現役

ブライアンのベクトラに対する不信感は、トランクに積まれた工具ボックスが証明しているが、それ以外にも、非常用食料としてキャドバリーの飲むチョコレートと、フラスコ瓶、それにベニリンの咳止め薬が入っていた。「これなしではどこにも行きません」と彼は言う。

ヒルマン・ハンター、アヴェンジャー、フォード・コンサルとフォード・コルチナといったモデルを運転してきたブライアンだが、そのなかの1台は14万8000kmで手に入れ、53万1000kmで売却している。


「ウェットコンディションでのコルチナは危険なクルマでした」と彼は言う。「いままで運転したなかでは、キャバリエが最高のモデルです。このクルマであればどこにでも行くことができます」

ブライアンは宅配ドライバーが単に先を急ぐことしか知らないと思われているのを忌々しく思っている。「つねに安全運転を心がけています。前走車との間には十分な車間距離を確保するとともに、周囲の状況にも注意を怠りません。数年間救急医療チームのドライバーを務めたことがありますが、緊急出動の際には速度制限も守る必要はありませんでしたが、この経験が周囲に注意を払うことの重要さを教えてくれたのです」

だからこそ、最近ブライアンが制限時速48km/hの道路を10km/hオーバーで走行したとして違反切符を切られたと聞いたときは驚いた。「速度超過はしていませんでした」と彼は言うが、「でも、証明することができないのです」と力なく続けた。

だが、ブライアンは間違いなく英国最高の宅配ドライバーであることは証明している。

クラッチの焼ける臭いが漂うなか、ソワービー・ブリッジの目抜き通りを慎重に進みつつ、チキンのカレー炒めがシートから落ちないように片腕を伸ばしているこの英国最高の宅配ドライバーが引退する日はまだまだ先のようだ。

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