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観光客がほとんどいない都市に、世界有数のカフェ文化が定着した理由

観光客がほとんどいない都市に、世界有数のカフェ文化が定着した理由

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インドネシアのジャワ島西部に位置するバンドン。1955年にアジア・アフリカ諸国による国際会議が開かれたことで一躍有名となったこの都市。実は、世界有数の「カフェカルチャー」が根付いていることは、日本はおろか東南アジアでもあまり知られていない。

バンドンの街を歩くと、どこか南アジアを思わせる光景が広がる。しかしその中に、突然、洗練された大きなカフェが姿を表す。そうしたカフェの多くは、建物が直線的でスタイリッシュ。そして天井が高い。使用するイスやテーブルは、建物と一体感のあるデザインが選択されている。


カフェの店内を錦鯉が泳ぐ。近代的な建物に自然が調和した不思議な空間だった

ある日訪れたカフェでは、テーブルのすぐ脇を錦鯉が泳いでいった。また、別の日に訪れたカフェでは、鳥かごをイメージしたような見たことのない内装で、あまりの居心地の良さに、気がつけば夜のとばりが下りていた。


植物の「壁」に覆われたカフェ。市内は近代的な建築を採用するカフェが目立った

周囲を見ると、皆コーヒーカップ片手に、友人らと語らっている。あまりアルコールを飲む習慣がないバンドンの人々にとって、カフェは「社交場」としてなくてはならない存在だ。

バンドン市内を何日にもわたって案内してくれたインドネシア系の知人は、「ストロング・カフェカルチャー」について「すごいだろう」と力を込めた。そして、笑顔でこう言葉を継いだ。「インドネシア国外の人は誰もこのことを信じてくれないんだ」。


アップテンポな音楽に合わせて若者らが体を揺らす。しかし手に持つのはコーヒーカップだ。屋外は広場のようになっており、夜の空気が心地よい

17世紀にオランダ人がアラビカ種を持ち込み、コーヒー栽培がスタートしたインドネシア。ここバンドンは高地に位置し、コーヒー栽培に適した環境であることから、古くよりコーヒー栽培が盛んだった。

暑いジャカルタから、乗り合いのバンに4時間揺られてバンドンを訪れると、その過ごしやすさに驚く。


アイスクリームに熱いエスプレッソをかけて食す「アフォガート」。バンドン市内の多くのカフェで目にした

バンドンのカフェカルチャーの歴史を垣間見ることができるのが、コーヒー豆の焙煎所「Kopi Aroma」だ。創業はなんと1930年(昭和5年)。販売する豆は、天日干し後8年寝かせてから焙煎したものだという。

バンドンのカフェ文化を支えてきた”聖地”では、コーヒー豆を求める地元住民らの長い列が絶えない。


「Kopi Aroma」の店内をのぞくと、店員らがコーヒー豆の計量に追われていた

ようやく順番が回ってきて狭い店内に入ると、香ばしくも優しい香りに包まれる。年季の入ったミルが渋い。

店員からオーダーを急かされ、アラビカ種をリクエスト。オランダ人が17世紀にジャワ島に持ち込んだのも、このアラビカだった。価格は500gで480円ほど。ハンドドリップで楽しんだが、非常に濃い一方でなぜか苦味が少なく、癖になる味わいだった。

バンドンで気になったのが、外国人観光客をほとんど目にしなかった点だ。2018年4月、シンガポールからLCCで訪問したのだが、日本の離島並みに小さな空港に着くやいなや、イミグレーションで訪問理由を執拗に尋ねられた(自慢ではないが私はイミグレでめったに止められない)。

なんとか切り抜け空港の外に出ると、その瞬間、怪しげな白タク業者が周囲を囲む。今回は知人に迎えに来てもらったため問題なかったが、空港周辺は中心部までの交通案内に乏しい。どう考えても、「外国人フレンドリー」ではないのだ。


こぢんまりとしたバンドンの空港。ジャカルタからは陸路が一般的だ

この話を案内してくれた知人にすると、「バンドンはジャカルタの人たちが遊びに来る場所だからね」と教えてくれた。

インドネシアの首都・ジャカルタからの道は整備されている。バンのシートは広くて座り心地が良く、コンセント付きだ。ジャカルタの中流層以上は、週末にバンや自家用車でバンドンを訪れ、1泊3000円台のホテルに滞在するのだという。私も今回同クラスのホテルに滞在したが、その価格が信じられないほど快適だった。


バンドンで筆者が宿泊したホテル。1泊3000円台とリーズナブルながら、広々として清潔感がある。1階にはアジアンテイストのカフェが入り、コーヒーを楽しむことができた

マーケティングの世界では、ターゲットの具体的な人物像を「ペルソナ」と表現するが、ここバンドンでは外国人観光客がペルソナとして設定されていない可能性が高い。そう考えると、空港からのアクセスが良いとは言えないことも納得だし、英語が全く通じないことも、うなずける(「GO」が通じなかった時は絶望感を覚えた)。

しかしながら、ここまで足を運んだ外国人観光客は、「スレていない」地元の人々の優しさに触れることができ、かつ極めて安価にコーヒーや食事を楽しめる。そうした意味では、あえてペルソナの枠から外れた土地を訪れることも、悪くはない。


「Kopi Aroma」の店内には年季の入ったコーヒー関連器具が飾られていた

歴史と立地を背景にした、こうしたバンドンの戦略は実に自然だ。脈絡のない開発に投資するのではなく、コンテクストのある最低限のハード・ソフトへの投資。高度経済成長期を大きく過ぎた日本も、参考になると感じる。

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