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リトル・マーメイドも叩く過剰リベラルの罪


行き過ぎたリベラルがトランプを生んだのか?(写真:Mark Ralston/AFP)

昨年の中間選挙を経て、アメリカの議会も1月3日から新しい構成員の下で始動しだした。下院を民主党が制したことから、議会には「ねじれ」が生じているが、それを象徴するかのように、さっそく定議会での予算案の調整がつかず、日本時間で1月15日現在、政府機関の一部が閉鎖中だ。しかし、これは次の大統領選挙までの混乱の序曲にすぎず、今後ますます保守とリベラルの対立が激化していくのではと、懸念する声は非常に多い。

国が分裂し続ける原因はどこにあるのだろう? メディアの報道だけをみると一見保守やトランプ大統領の強引さだけが問題なのかとも思えてしまう。

行き過ぎた寛容性に疑問の声

しかし、リベラル人口が極端に多い地域であっても、最近聞こえてくる一般市民の反応は、メディアのそれとは少し違うようだ。リベラルにもかかわらず「リベラルの報道がフェアとは言えない」と指摘をする人も増えているし、「リベラル自体にも問題がある」という意見を持つ人すらも結構いるのだ。

報道される情報だけを見て、現代アメリカを語ることなかれ――。今回は、アメリカの「現代流リベラル」が、間違った方向に行っているのではという懸念を持つ、新たなリベラル派たちの実態に迫ってみたい。

一般的にアメリカのリベラル主義というのは、税金を財源とする政府介入の下で、貧困、自然環境、人権、福祉など、あらゆる社会の問題を克服するための政策を重んじる。また、性や宗教の多様性などにも寛大で、不法移民に対しても人権という視点において寛容性がある。

しかし本来リベラルの理想ともいうべきこうした寛容性に対し、困惑しだしたリベラル派が増えている。彼らの多くは中間層、特に子どもがいる家庭だ。

まず、彼らが問題視するのは、弱者への過度な施しである。まじめに働き、税金を納め、日々の生活をやり繰りしている中間層にとっては、時に度が過ぎるとも思えるリベラル政府の貧困援助や不法移民保護などには、納得できない部分も多いといえる。

たとえばいまだ着地点の見えないオバマケアも、この層には不人気だ。オバマケアの恩恵で今までかなわなかった医療を受けられるようになった貧困層には歓迎されているが、その資金源は税金。リベラル優位の州では、こうした保障制度維持のために税金は高くなる一方だ。

また保険代はオバマ前大統領の公約とは裏腹に、結果的に上がってしまったというケースのほうが多く、中間層の家計を直撃している。彼らが政府や大手企業に勤めていれば、組織が保険の約半分をカバーしてくれるからまだマシだろう。しかし、アメリカ全人口の35%を占めるフリーランスで働く人たち(アメリカの非営利団体Freelancers Union調べ、2018)からすると、保険金の値上がりは打撃でしかない。

社会主義的様相を醸し出すようになった

カリフォルニア州サクラメント市に住むフリーのウェブデザイナーをしているジョージ・リントンさん(35歳)は、妻と2人の子どもがいるが、家族を賄う保険に日本円にして毎月12万円もの支払いが必要であることに頭を抱えているという。

「フリーは儲かるときと、そうでないときの差がかなりある。たとえば月に3000ドルしか稼げないようなときでも、その半分以上が税金と保険に消えてしまう。税金は毎年上がっている。僕らだって苦しいのに、政府はその横で正義を振りかざし、不法移民などを優先する。これはあまりにフェアとは言えない。生活費の安い土地に引っ越したいが、そういう土地に自分の仕事があるかどうかを考えると不安になるし、八方ふさがりな気分さ」

ジョージさんは「アメリカのリベラルは、社会主義的様相を醸し出すようになってしまった」とため息をつく。頑張って働いても報われない、政府に完全依存する人たちが増え続ける、少しでもそうした不公平を口にすれば、周囲のリベラルたちから非難される――。

平等や多様性を歓迎するリベラル主義を自らも支持しているはずなのに、リベラルであることが時に耐えられない――。ジョージさんのような人は少なくないのだ。

マイノリティーへの過剰な配慮により、子どもへの性教育のあり方が過激になってしまうことにもついていけない人は多い。リベラル優位の州では、小学校で「性別は選べる」「自分が思い込んでいる性と違う場合もある」というようなことを教える自治体が増えている。

しかし、自分がどんなにリベラルで、性の多様性に賛成であっても、それを歓迎できない親はかなりいる。以前の記事で、ゲイのカップルがこうした性教育に最も嫌悪感を示した話を紹介したことがあるが、性的少数派に入る人の中にすら、「小さな子どもにこうした教育はふさわしくない」と考える人はかなり増えていると思えてならない。

そんな1人、ワシントン州ポールスボー市に住むマリア・ブラウンさんは、レズビアンのシングルマザーだが、公立学校の性教育についていけず、数年前に一人娘を「ホームスクール」に変更した。

小学生に性的マイノリティーの話をする意味

これまでも問題に思う点はいろいろあった。その1つはワシントン州が決定した性教育方針で、過剰ともいえる小学校向け性教育プログラムに懸念を示す親たちのミーティングにも積極的に参加していた。

そんな中、7歳の娘が通う小学校で「マイノリティーの代表として、レズビアンとして生きることも、異性愛者と同様すばらしいことであることについて話してくれ」と依頼された。ブラウンさんは、これがホームスクール移行への決定打となったと苦笑いする。「小学生にいったい何を話せというのでしょう? 私にはさっぱり意図がわかりません」。

ホームスクールとは、学校には通わせず、自宅、あるいはコミュニティーの有志が集まって、子どもに教育を行う仕組みのことをいう。ホームスクールは国への登録の義務がないため、正確な数字は把握しにくいとされているが、現在アメリカ全体で推定150万人強の子どもが、ホームスクールで学んでいるとされる。

ホームスクール・ドット・マーケティング社が毎年発行している『The Homeschool dot Marketing 2018 Report on the American Homeschool Market(アメリカのホームスクールの現状)』2018年版をみると、2013年以降ホームスクールへの移行者の数は、年間10%近く増え続けていることがわかる。

ブラウンさんが住むポールスボー市でも毎年ホームスクール家庭が増えているというが、そうした人たちと話していると、やはり公立学校の行き過ぎた性教育には、ほとんどが拒否反応を示す。

マリアさんは言う。「性的少数派の多くは、リベラル派が推奨するような平等を求めてなんかいないし、リベラル派が暴走的に推し進めているような性教育が必要などと思ってはいません」。

「私自身がレズビアンでも、子どもは自分で自分の性に気づくまでは、自然体のままでいてほしいんです。学校が子どもの性について、意図的な刷り込みをすることは、歓迎される行為ではありません。マイノリティーへの理解は、ふさしい年齢になってからにすべきことだと断言できます。私の周囲には、そうした教育が嫌で子どもをホームスクールに切り替えた親がかなりいますよ」

トランプを生んだのはリベラルの責任

マリアさんの周りでは、公立学校に通う親でも「どうやって子どもたちを公立で行われる不必要な教育から守るか」といった対話集会を頻繁に行っているという。ポールスボー市というコミュニティー自体「今の教育や国のあり方が、子どもたちに望ましくないのでは」という問題意識を抱いているようだ。

筆者が参加した「真のリベラルは、どうやって現代リベラルの暴走を止めるべきか」という会合も興味深い内容だった。参加者はリベラル派なので、トランプ大統領や現政権のあり方には基本的には反対の立場だ。しかし、集まった人はみな、自戒の念にも駆られていた。彼らが集会を行った前提には、「人々がトランプ大統領を支持し、現在の政権に未来を託したのは、すべて自分たちリベラルの責任だ」というものがあった。

この会を取りまとめたジョン・マクラウドさんは、50歳の会社経営者。彼は昨年8月にアメリカ心理学会(APA)が発表した報告書の内容を取り上げ、「このままでは、暴走しているともいえる過激なリベラルたちがアメリカをダメにする」と警笛を鳴らした。

彼が問題視するのは、APAが昨年行った研究調査の結果だ。報告書は全36ページ。簡単に内容をまとめると、「伝統的な男らしさイデオロギーは男性の心理的発達を制限し、性役割の緊張と性役割の葛藤をもたらし、精神的健康と身体的健康に悪影響を及ぼす。また、男性の少年は学業の卓越性を追求するのではなく、同性愛嫌悪、いじめ、さらにはセクシャルハラスメントなどの破壊的な行動に力を注ぐ可能性がある」といったものになる。

「この報告書は実によく、現在はびこっているリベラル派の勘違いを象徴しています。男性性そのものを否定することは、人類の歴史そのものを否定しているのと同じ。セクハラ撲滅や性差のない社会づくりをしようという動き自体は正しいですが、リベラルが躍起になっている#MeTooなどは、社会混乱の種にもなっています」

この会ではその象徴的事例として、ディズニーの人気映画『リトル・マーメイド』が、女性差別を加速させると問題視された件が挙げられた。アイビーリーグの1つとしても知られる名門、プリンストン大学に端を発するこの騒ぎは、『リトル・マーメイド』の劇中歌、『キス・ザ・ガール』が有害であるとしたのだ。

問題の歌詞を直訳すると「女の子は黙って待っている、だからキスをして」とでもなろうか。同校には男性だけで構成されるアカペラの歌唱グループがあるが、そのグループが「キス・ザ・ガール」を歌うことに嫌悪感を表した女性たちの見解が抗議運動に発展したのだ。

彼女たちの言い分は「これらの歌詞は、明確な同意を得ることなく男性が女性に性的なアプローチをすることを明確に奨励している」というものだった。

本当のリベラルは極論を支持する思想ではない

「結局これも男性らしさが有害という、アメリカ心理学会の見解に似ています。リベラルたちは#MeTooや性的マイノリティーの配慮という常識を振りかざし、社会を混乱させているのです」とマクラウドさんは言う。

「今の時代、女の子が女の子らしく、男の子が男の子らしくというようなことも、うっかり言えない世の中です。こんな混乱した世の中で、私たちはどうやって、自分の子どもをまともに育てていったらよいのでしょう? これがリベラルなら、私はリベラルをやめたいと思います。本当のリベラルというのは、自分の見解を押し通すために極論を支持するような思想ではないはずです」

マクラウドさんは、「リベラル派がリベラルの問題を内部から指摘していくことは重要だ」と語るが、そのとおりだと思う。リベラルの根本は「異なる見解や背景のある人を受け入れる寛容性」が重んじられていたはず。そして、そのリベラルらしさを大切にしたいリベラル派たちは大勢存在するのだ。

アメリカの大手メディアで話題になるのは、むしろ過激派である。それが世界に「アメリカの今」として紹介されている傾向があることは非常に残念である。

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