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「4代目プリウス」は一体、何がズレていたのか


奇抜すぎた前後ランプデザインをすっきりとまとめ直した(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

登場から約3年。トヨタ自動車の「プリウス」がマイナーチェンジを行った。通算4代目となる現行モデルでは初めての大がかりな変更である。

エクステリアデザインの大幅変更

もっとも自慢のハイブリッドシステムをはじめとするメカニズムについて変更はない。大きいのは「クラウン」「カローラ スポーツ」に続いて全車にDCM(車載通信機)を標準搭載したコネクテッドカーとなり、先進安全装備のパッケージであるToyota Safety Sence(トヨタセーフティセンス)の内容を充実させたうえで、やはり全車標準装備とされたこと。そして何より、エクステリアデザインに大幅に手が入れられた。


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登場当初から、4代目プリウスのデザインには批判の声が多かった。特に前後のライトまわりの形状は複雑怪奇だし経緯不明だしで、男性からもそうだが特に女性からとことん嫌われてしまった。開発陣はデビュー時に「変わっていないと思われるのを避けたかった」と言っていたが、いったいどうしてそんなに自信がなかったのだろうか。ユーザーのことを真摯に考えたコンセプトを明確にし、時代に応じて進化させ、それに従った形状を与えれば、ユーザーはちゃんとそれを理解したはずである。たとえば、フォルクスワーゲン(VW)「ゴルフ」のように。

実際、現行プリウスのハードウェアは劇的な進化を遂げていた。TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)に基づくGA-Cプラットフォームの採用によって走行性能、快適性は飛躍的に向上したし、ドライビングポジションも適正化された。クルマとしての基本性能が格段に底上げされたのだ。

そして燃費である。ハイブリッドシステムの基本構成は変わらないものの中身はほぼ刷新され、JC08モード燃費はついに大台突破の40.8km/Lに到達した。

しかしながら、それらの進化をもってしてもプリウスのセールスは予想を下回ることとなった。いったい何がよくなかったのだろうか。デザインだけが唯一の問題だったのだろうか?

そもそもプリウスが登場したのは1997年。「21世紀に間に合いました」というキャッチフレーズは今も記憶に新しいこの初代プリウスは、必ずしも燃費スペシャルとして開発されたわけではない。目指したのは21世紀にふさわしい乗用車の再定義。優れたパッケージング、走行性能、快適性と、それまでの常識を覆すような低燃費が志向され、その方策としてハイブリッドが採用されたのだ。

もっとも、この初代プリウスは話題にはなり、新しもの好きが飛びついたがセールスはそこそこという程度だった。ヒットになったのは2代目からである。しかも興味深いことに、モデルライフの後半に向かうに従って尻上がりで販売を伸ばしていったのである。

プリウスがライフスタイルを表すクルマになった

支持された理由として、もちろん燃費は大きい。電気モーターで発進し、必要がなくなれば走行中でもエンジンを停止するなど、走りの新鮮さも要因だったことは間違いない。けれど何より大きかったのは、こうした個性によってプリウスがライフスタイルを表すクルマになったことだ。「環境にいいクルマを選んだ感度の高い自分」をアピールするツールとしてプリウスは機能した。俳優のレオナルド・ディカプリオが乗っていたという逸話なども、それを大いに後押ししたはずだ。

輸入車からの乗り換えも異例なほど多かったという。高コストな輸入車から日本車に乗り換えたいけれど、格落ちと見られるのはイヤ。そんなニーズにハマッた。これは環境を見据えたクルマ。こういうライフスタイルを志向しての、あえての選択なんだというポーズを取れたからである。

燃費の数値は、いわばその象徴。本当に燃費やコストを最優先とするならコンパクトカーや軽自動車のほうがいいだろうし、車両代の差を燃費で取り返すには何十万kmも走る必要がある。つまり、それがいちばんの理由ではなかった。

そんなプリウスに対抗しようとホンダが「インサイト」を投入した後に登場した3代目プリウスも大ヒットとなり、ライバルを駆逐する。そして、いよいよ2015年、4代目の登場となったわけだが、トヨタはここでミスをしたように思う。

まず燃費にこだわりすぎた。前述のとおり、ユーザーはそれだけにこだわっているわけではない。もちろん燃費はよければよいほどいいが、そのためにリアシートが狭いとか、騒音や振動が小さくないとか、そういうものはもはや望んでいなかった。TNGAの分、走りは底上げされていたけれど、その味わわせ方への配慮は足りていなかったと言っていい。

デザインもそう。大事なのはちょっといい買い物に見えること、プリウスらしく見えることなのに、お絵描きのようなグラフィックスで奇抜なデザインにしてしまったのだから、受け入れられるはずがなかった。もはやプリウスが先進層のクルマではなく、むしろ(実際はともかく)多少は余裕があると自負している保守層のクルマになっていたことに、もっと意識的であってもよかったはずだ。

しっかりプリウスらしく見えるデザインへ

今回のマイナーチェンジで、新型プリウスはそのあたりを補正してきたように見える。まず、誰が見ても「何だコレ?」とは思わせない、そしてしっかりプリウスらしく見えるデザイン。さらに、先進層のニーズに応えるコネクテッド機能や先進安全装備も用意された。従来は、こうした要素を求める層をプリウスPHVで吸収しようと考えていたが、期待したほどユーザーを集められなかったこともあり、プリウスでそこに対応してきたようだ。

一方、驚いたことに、これら標準装備の充実により新型プリウスのカタログ燃費数値は、マイナーチェンジ前より悪化している。最も低燃費の“E”で、JC08モード燃費は39.0km/hにとどまるのである。

これが英断であることは説明の必要はないだろう。ユーザーが求めていたのは、まさにこういうプリウスだったのではないだろうか。実際に出るわけではないカタログ燃費の40km/hという数値より、適度に先進感あり、質の高いクルマという……。

これだけで簡単にセールスが上向きになるのかどうかはわからない。おそらく急浮上ということはないだろうが、しかし今まで拒絶していたような人も、新型は「まあ、いいんじゃない」と思わせそうではある。

気になるのは、プリウスPHVのポジショニングの再定義だが、それは取りあえずこのあとの話。まずはトヨタがこのプリウスを、商品の変化に合わせて売り方までしっかり修正してこれるかどうかに注目したい。

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