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安倍首相の「対ロ交渉姿勢」が危なすぎるワケ


安倍晋三首相(写真左)とロシアのプーチン大統領(同右)は、数十年に及ぶ領土問題の解決に向け平和条約交渉を加速させることで合意した。シンガポールで14日撮影(写真:ロシア大統領府提供)

日ロ関係が、大きく動き出しつつあるようだ。安倍晋三首相とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は11月14日、シンガポールで会談。「1956年の日ソ共同宣言を基礎として平和条約締結交渉を加速させることでプーチン大統領と合意した」(安倍首相)。


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安倍首相は、北方4島についてプーチン大統領と具体的にどのように交渉していくのか、直接的には発言していないが、「首相は今後2島の先行返還を軸に交渉を進める方針に転換した。国後(くなしり)、択捉(えとろふ)の2島も含め北方4島の返還を求めてきた日本政府の方針を転換することになった」との趣旨を掲げるメディアもある。

この見方が正しければ、安倍首相の交渉姿勢については強い危惧を覚える。

安倍首相の交渉姿勢のどこが危ないのか

第1に、安倍首相は、自分が首相である間に北方領土問題を解決しなければならないという気持ちが強すぎる。

今回の会談後は、「この戦後70年以上残されてきた課題を次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領の手で必ずや終止符を打つという強い意志を大統領と完全に共有した」と述べているが、今回だけでなく、この趣旨の発言は従来繰り返しており、安倍氏の持論である。

長い間実現しなかった問題を早期に解決すること自体は国民が望むことであるが、しかし、国家間の交渉において自ら期限を設定することは危険だ。必要以上に譲歩をしてしまうからだ。

プーチン大統領も同じ考えであるかのように安倍首相は述べているが、同大統領は、本心では平和条約交渉を急いでいないことは、従来の発言からも明らかである。北方4島を占領しているのはロシアだから、急ぐ理由は本来ないのだ。

第2に、安倍首相は、これまでの先人の努力を無視、あるいは軽視しているのではないか。1973年、田中角栄首相がソ連を訪問し、「ブレジネフ書記長との最終会談で田中首相から、未解決の諸問題の中には4島の問題が入っているということを確認したいと述べたのに対し、ブレジネフ書記長は、そのとおりであると答えた。そこで田中首相から重ねて、諸問題の中には4つの島が入っていることをもう一度ブレジネフ書記長から確認してもらいたいと述べたのに対し、ブレジネフ書記長はうなずきながら、結構ですと答えた」。カッコ内の引用は、「ですます」調を改めるなど一部読みやすくしたが、外務省『われらの北方領土』に記載されていることだ。

1956年の日ソ共同宣言には「4島」と記載されなかったが、16年かけてここまでこぎつけたのだ。

4島の名前まで明示

1991年、ゴルバチョフ書記長の訪日が実現し、海部俊樹首相と会談した後に発表された共同声明においては、「歯舞群島、色丹島、国後島および択捉島の帰属についての双方の立場を考慮しつつ領土画定の問題を含む」両国間の平和条約の話し合いが行われたと発表された。

田中首相の時には、具体名のない「4島」であった。それでも大変な前進だったのだが、それから18年後のこの時には、「歯舞群島、色丹島、国後島および択捉島」と明示されたのだ。しかも、これら4島が平和条約において解決すべき領土問題の対象であることが確認された。

1993年、細川護煕首相は訪日したエリツィン大統領と会談し、その結果発表された東京宣言では、「択捉島、国後島、色丹島および歯舞群島の帰属に関する問題」を「歴史的・法的事実に立脚し、両国の間で合意の上作成された諸文書および法と正義の原則を基礎として解決することにより平和条約を早期に締結するよう交渉を継続し、もって両国間の関係を完全に正常化すべきことに合意する」と明記された。

ここに挙げたのは複雑な交渉の中核部分だけであり、実際には、日ロ双方の関係者の膨大な量に上る、粘り強い努力があったからこそここまでこられたのであった。

安倍首相にはこの先人の努力を無視してもらいたくない。先人の努力は何ものにも代えがたい貴重なものであり、自分が在任中に解決することを決意したとして片付けられることでない。

安倍首相は、北方領土問題を「次の世代に先送りしない」と言っている。先人が「先送りした」とは言っていないようだが、そう解釈される。そうであれば、この表現は適切でないと言わざるをえない。誰も「先送り」などしなかった。

第3に、北方領土問題は、日本とロシアのどちらに理由と正義があるかに従って解決すべきだ。

日本の主張に瑕疵がないわけではない。詳しく説明するゆとりはないので、結論だけ述べるが、日本が「千島列島」を放棄したのは事実である。サンフランシスコ平和条約に明記されている。しかし、日本は「千島列島」をロシアの領土だと認めたのではない。もちろん米国領だとみなしたのでもない。つまり、日本が放棄した後の「千島列島」の帰属は未定なのだ。

日本政府の交渉方針が一貫していなかったのも事実だ。4島返還でなく、2島であってもよいという考えがあったのも事実だと理解している。しかし、そうだからと言って、ロシアの主張が正しくなるわけではない。

日本とソ連との交渉において、アメリカの影響があり、ソ連に不当な譲歩をするなら沖縄を返さない、と言われたこともあった。その筋では有名な「ダレスの恫喝」である。しかし、日本はそれを受け入れ(受け入れざるをえなかったのだが)、日本政府の方針としたのであり、それは日本政府の決断だった。

いまでも、アメリカとの関係は北方領土問題に影を落とすことがある。北方領土が返還された場合、米軍基地を置かないという条件を明確に示さなければならないというプーチン大統領の要求である。プーチン氏は、安倍首相がトランプ大統領と合意したことを示す文書まで要求しているそうだが、それは日本の主権を無視する無礼な要求だ。なぜそのようなことを言うのか。プーチン氏はアメリカといかに対抗していくかが最重要問題であり、その枠の中で日本との関係をとらえているからではないか。

第4の危惧点

第4に、ロシアの主張にも欠陥がある。北方4島についてロシアの領土主張を裏付ける根拠は、実は皆無なのだ。

わずかに、ロシアは、「戦争の結果としてロシアが取得した」と主張している。これは完全な謬論ではないが、戦争の結果「千島列島」を獲得してよいと、どの国も認めたわけではない。第二次大戦後にアメリカがソ連に認めたのは「千島列島」を「占領」することだけであった。

では、ロシアは、20ある「千島列島」のうち、いくつの島を獲得するのが認められるかということになるが、これは第二次大戦後回答が出されないまま今日に至っている問題であり、簡単に解決できない原因の一つだ。「択捉」「国後」はその一部である。

あまり言われないことだが、筆者個人としては、日ロだけでなく、アメリカも加わって解決するのがよいと思っているが、アメリカがそれに応じるかどうか、わからない。

日本では、日本側の瑕疵に議論が集中するきらいがあるが、ロシア側の主張もしっかり分析すべきである。プーチン大統領の年内平和条約締結提案などは話題になるが、根本問題が忘れられてはならないだろう。

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