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食品スーパー「オーケー」の有報が面白すぎる


独自の運営で知られる食品スーパー「オーケー」だが、株主への説明もまた独自だ(撮影:尾形文繁)

「勝つために何をするか、道は解かっています」「売上予算の達成を重視し、英知を集めて対応します」「競争には絶対に勝つ」――

神奈川県や東京都など首都圏に113店(2018年9月末時点)の食品スーパーを運営するオーケー。「毎日が低価格(エブリデー・ロー・プライス)」を掲げ、チラシはまかない、値上げの理由などの商品情報を店内に「オネスト(正直)カード」として掲示するなど、独自の運営方法で知られる。低価格がウリながらも利益率は業界平均以上で、業界でも一目置かれる存在だ。

そのオーケーの発行する有価証券報告書(有報)の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」が、また独自なのだ。冒頭に引用した一節のように、株主に直接呼びかけるような表現で埋め尽くされている。

紋切り型の説明はしない

オーケーは未上場会社だが、株主数が多いため、有報の提出義務がある。同社の有報は金融庁が所管する電子情報開示システム「EDINET」で閲覧できる。

普通、有報における「対処すべき課題」は紋切り型で、通り一辺倒の内容になりがちだ。「当連結会計年度における国内経済は〜」から始まって、フォーマットが決まっているかのような表現が続くことが多い。

しかし、オーケーは違う。終わった期の振り返りに加え、次期予想も数字を明示して説明。青果、精肉、水産、総菜の各部門の状況と、認識している課題と対応策などが書かれている。

「お友達宅配(という施策)はご利用が少なく見直しています。宅配手数料10%に抵抗があるようで、思慮が足りなかったと反省しております」「ネット販売でも『エブリデー・ロー・プライス』を実現するのが大きな課題ですが、やりがいもあります」といった調子。

売り場を知り尽くした経営者でなければ語れない内容が、平易な言葉で、既存店実績など必要な数字も折り込んで説明されており、個人投資家はもちろん、プロの機関投資家も歓迎するであろう内容だ。


売り場にも段ボールが積まれ、飲料は冷やさずに売る。こうした効率運営が低価格につながる(撮影:今井康一)

それもそのはず。同欄を書いているのは、創業オーナーである飯田勧代表取締役会長本人である。飯田会長が草稿を書き、二宮涼太郎社長などとやりとりをしてまとめる。

オーケーは毎年4月に取引先を集めた「オーケー会」と呼ばれる会合を開いている。実は有報の「対処すべき課題」は、その際のスピーチ原稿を活用したものだ。新年度にあたりその年の会社方針を取引先に説明したもので、平易な表現で具体的な施策が並ぶのは、そうした理由もある。

閉店知らずで31期連続増収

同社の業績は好調だ。31期連続で増収が続いており、同社が重視する経常利益も年によって多少のでこぼこはあるが、基本的なトレンドは右肩上がり。

低価格ゆえに粗利率は同業他社よりも低いが、販売経費を絞り込むことで、同業他社よりも格段に高い営業利益率を確保している。1982年以降に開業した店舗では、移転拡張や老朽化による閉店はあっても、業績不振での閉店は皆無だ。


そのオーケーが最も重視する経営指標は売上高だという。トップラインを重視する企業は今や珍しいが、採算を確保する施策を徹底していれば、トップラインの上昇に利益はおのずとついてくる、という発想だ。

創業以来の飯田氏の信念は、トップラインを上げるために1人でも多くのOKファンを作るということ。そのファン作りの施策の一つが「オーケークラブ」だ。入会すると食料品について約3%相当の割引が受けられる、いわゆる友の会的組織だ。

流通業の一般的な会員組織は、顧客が割引などの特典を受ける代わりに自らの情報を提供、企業側が情報を分析してマーケティングなどに生かすといったギブアンドテイクの関係が成立している。

一方、オーケークラブは郵便番号の登録と200円の手数料のみで入会できる。顧客側が一方的に得をしていることになるが、「ファンを増やすことが目的なので、損をしている認識はない」(二宮社長)という。


ファン作りという姿勢は資本政策にも現れている。オーケーでは2007年〜2009年にかけて、計3度、種類株式を発行している。応募資格をオーケークラブの会員である個人に限定、証券会社による引受を付けず、応募はオーケーが直接、店頭で受け付けた。

同社の株主数は、普通株で法人77に対し個人が257人。これだけでも未上場会社としてはかなりの数だが、これに種類株の延べ5647、うち個人株主の5638が加わる。

株主になってもらい「同じ船に乗る」

種類株の調達総額は3回合計で73億円強だった。販管費35日分程度の金額でしかないので、顧客に株主にもなってもらう趣旨だったことは間違いない。種類株は議決権こそついていないが、配当順位も残余財産の分配順位も普通株と同順位。直近の配当性向は18%で、「世の趨勢に合わせて、少しずつ高めている」(二宮社長)。

1株あたりの発行価格は2007年7月発行分が2500円、2008年9月発行分が3074円80銭、2009年9月発行分が3530円20銭。算定方式は直前半期の経常利益の55%を2倍し、発行済み株式総数(普通株と種類株の合計)から自己株を差し引いた株数で割り、それを17倍する。

つまり、1株あたりの税引き後の経常利益の17倍である。特損益を考慮しないので当期純利益ではなく経常利益を使うが、税金は考慮するので経常益の55%。それの17倍だから、感覚的にはPER(株価収益率)が17倍ということだろう。


オーケーの二宮涼太郎社長。三菱商事出身。小売業はまったくの畑違いだったが、「日々改善で面白い」(2017年1月に今井康一が撮影)

株主は自由に株を売買することはできないが、発行翌年から1月と7月の年2回、会社に取得請求できる。この際の算定方式も発行時と同じ。直近半期の経常利益が79.8億円(単体ベース)だったので、現在の買い取り価格は、ざっと5400円程度となる。

種類株主は同社の成長によって、配当だけでなく、それなりの果実を得ていることになる。同社の普通株主には取引先が多く、「株主になってもらい、取引先、そしてお客様と一つ同じ船に乗る」(二宮社長)。

もっとも、種類株について議決権までは与えていないところは手堅い。現時点では新たに種類株を発行する計画はないという。

オーケーは株主に送付している事業報告書にも、有報と同じ文章を載せている。有報はプロしか読まないだろうが、事業報告書は個人株主でも普通に目を通す。

有報も事業報告書もプロが読むもの、という発想から脱却し、個人にもわかりやすい情報開示を心掛ける。自社製品の優待の次の一手として、ファン株主を増やしたい上場企業にとっては大いに参考になるのではないだろうか。

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