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終身雇用が崩壊しているのに35年ローンで自宅を買う怖さ

 先日、著名ブロガーのイケダハヤト師が地銀に資金を借りに行って玉砕したというニュースが流れてきて、興味津々でありました。

地銀に融資の相談に行ったら、そこは「紙・電話・FAX」の世界で驚いた話。 http://www.ikedahayato.com/20180915/76968948.html

イケハヤ地銀に行く http://www.haradesugi.com/entry/ikedahayato_12

高知の山奥から東京で消耗と煽るプロブロガー、地方銀行に融資相談で消耗 http://kabumatome.doorblog.jp/archives/65922100.html

イケダハヤト、地銀に融資を断られる? https://www65.atwiki.jp/ihayato/pages/82.html


©iStock.com

本題は住宅ローンの是非であります

 イケダハヤト師といえば、東京で活躍するブロガーだったのですが、サラリーを貰って働く勤め人よりも自由な働き手としての魅力を伝え、勢い余って新天地に高知県を選び、本当に移住してしまい、さらには自力であばら家を立てて奥さんと子育てしながらブロガーライフを送っているという逸材です。

 とにかく自分をさらけ出してコンテンツ化しているのもあって、ある種のトゥルーマンショー状態であり、上記のように「住宅ローンの借り入れに地銀を訪れて、2週間待たされる」というだけですでに面白いわけです。ネット内外で非常に毀誉褒貶のある人物ではありますが、こういう振り切った人が存在するだけで「ああ、ネット見てて良かったな」と思えるのです。

 で、本題は住宅ローンの是非であります。確かに高知県の、それもド田舎に家を建てようとカネを借りに行くイケダハヤト師の面白さに引っ張られがちですが、我が国の住宅ローンというのは昔から「頼りがいがあるけど会社にしがみつく原因」であり、住宅ローンにうっかり手を出してしまって破産する悲惨な事例が喧伝されることもまた多くあります。仕事を辞めざるを得なくなってローンが払えなくなり、せっかく買ったマイホームやマンションを泣く泣く手放す人たちが少なくないのが実情です。

スルガ銀行に、人はなぜ騙されたのか?

 一方で、日本の住宅ローンを巡る融資環境はとても恵まれています。なんせ、新規で住宅ローンを借入しようとすると、変動金利で年0.625%ぐらい、10年固定でも1%以下の水準で、国もまた、資産性の高い住宅ローンを借り入れできない人たちに対して住宅金融支援機構が固定金利の「フラット35」を提供。借入期間が21年から35年で年利はなんと1.410%です。

https://www.flat35.com/loan/flat35/index.html

 通常の事業性資金を借入したり、不動産を担保にお金を調達しようとすると、信用保証協会に入り連帯保証も添えて2.8%から4.0%ぐらいが相場ですし、仕事がなくて定期収入がなく信用状態の悪い人は金利がべらぼうに高い消費者金融に行かないとお金を借りられない状態になることもあります。それを考えると、庶民の資産形成において非常に低利で資金を貸してくれるこれらの住宅ローンは強い味方、であるはずです。

 ところが、以前問題になったスルガ銀行やスマートデイズの「かぼちゃの馬車」、あるいはその他面白デベロッパーによるゴミアパート濫造投資や、この手の界隈で定番の投資性不動産を謳うワンルームマンション、あるいは坪330万円以上にも及ぶ湾岸立地のタワーマンションなど、いくら金利が安いと言っても支払いのシミュレーションで所得の2割を超えて元本と金利の返済に追いまくられるとかなりの勢いで生活が破綻することも考えられます。手取りが50万円の共働き夫婦が、将来35年間働き続ける前提で負担できるローン返済の上限はだいたい月10万円から12万円と見込むべきで、フラット35で頭金なしに物件購入費用を賄おうとするならば、4,000万円が手の届くマックスになるわけであります。

誰にも答えられない未来予想

 それもこれも、お前本当に35年間働き続けるんか? という問題に尽きるわけですよ。いや、石にかじりついてでもいまの会社を辞めない!! と決心したとしても、30歳で結婚して共働きして通勤1時間圏内のマンションを買おうとすると、三鷹より西、流山よりも茨城寄り、川崎よりもアレな地域の物件でないと子育ても含めて充分な広さがないだろという話になりかねません。また、30歳で35年ローン組んで、おまえ65歳まで夫婦でえっちらおっちら働き続けられる保証はある? と訊かれると、もうそれは誰にも答えられない未来予想になるわけであります。

 そう考えると、日本で働くこと、子どもを産み育むことと、それを支える充分な住環境を、と思ったときに、想像以上にハードルが高いことが分かります。賃貸でいいや、と割り切ったとして、子ども部屋が欲しくなるライフステージや夫婦の転勤事情などにあわせて借り換えながら暮らしていくことになるわけですけど、資産になることはない賃貸料を一生払い続ける覚悟があるかどうかって話にもなります。貯金ができない、老後の資金も考えなければならない、子供の教育費は、といろんなものを考えて行ったとき、我が国の経済システムと人の人生にかかる費用のバランスの悪さに改めて気づくのです。

サラリーマンは物件投資においては常にカモである

 それもこれも、日本経済が右肩上がりで、一度勤めた会社はなるだけ長く勤めるものであり、退職金が一定額まとまって入ってくるライフプランの中で、かならず年2回はボーナスが出るんだという働き口がある前提で、とても低金利の住宅ローンが利用できて初めてその人たちは資産性のある住宅を吟味して買うことができる。正社員になれなければ人にあらずというわけではないけれど、転勤は当たり前、将来が不透明なフリーランスが社会で担う役割が増大し、一方で地方都市では高齢化が進んで空き家も増え、子供が独立した家庭では大きい家を持て余す老夫婦が「減築」したりするご時世で、経済システムだけは「安定した働き口を持て」「さすれば有利な住宅ローンを制度として利用させてやろう」という昭和の名残のようなものが残ってしまっているのであります。

 ある程度、金融資産が増えてくると買った物件をまた担保に入れてさらに投資性の高い物件を買って手を広げる大車輪もありえるわけですけど、今回、スルガ銀行の事例ではっきりしたことは「サラリーマンは物件投資においては常にカモであり、実際には中途半端な掛け金しかぶち込めない人たちには微妙な物件や案件しか回ってこない」という悲しい現実だったりもするのでしょう。騙されないためには、頑張って調べて知恵を付けて行くしか方法はありません。以前、楽待新聞がスルガ銀行問題を仕掛ける前に書いている記事などが味わい深いのですが、不労所得となる不動産賃貸収入を見込んだサラリーマンが、せめてもの生活の安定と潤いを求めた結果、悲しいほど簡単に金融機関に絡めとられていったというのは特筆されるべきことです。

「スルガ」で破綻するサラリーマンは増えている 昨年チェックした競売物件の3割がスルガの融資案件という事実|楽待新聞
https://www.rakumachi.jp/news/column/217595

 そう考えると、冒頭のイケダハヤト師の地銀への借り入れ申し込みにまつわる顛末は、実のところ現在の日本経済が内部に抱える物凄い矛盾や、右肩上がりから人口減少による撤退戦のフェーズで起きている現象をもろに体現しているように感じます。「イケダハヤト師でも銀行から住宅ローンを借りられる経済」が良いかどうかは、受け止める側の価値観や印象によるとは思いますが、私は精一杯生きているイケダハヤト師が好きですよ。

 また、そういうスコープから「変遷している日本経済」のなかに金融機関が繰り出す35年という途方もない長さを、みんな感じ取ってほしいと思います。

(山本 一郎)

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