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むしろ過酷、親が苦悩する「小学生の放課後」


子どもが小学生になっても、全然ラクにならない(写真:Greyscale/PIXTA)

新聞記者を辞めた後、会社員と女性活躍に関する発信活動とバリバリ働いてきた中野円佳さん。ところが2017年、夫の海外転勤により、思いがけず縁遠かった専業主婦生活にどっぷり浸かることに。教育社会学の大学院に所属し子育て意識の調査も手掛ける一方、自身が当事者になることから見えてきた「専業主婦」という存在、そして「専業主婦前提社会」の実態とそれへの疑問を投げかけます。

保活を乗り越え、3歳の壁を乗り越えた、共働きの夫婦が次に直面する巨大な壁。「小1の壁」について、当事者の置かれた状況をどれだけ知っているだろうか。


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子どもが小学生になるとそれまでとは別の問題が出てきて、両立が難しくなるこの問題。当事者たちにとって深刻である一方で、周囲はほとんどこの大変さを理解していない。

「お子さんが小学生になって、両立は大分ラクになったでしょう」

共働き子育て歴10年のある女性は、男性の同僚や上司のそうした無邪気な言葉に困惑し続けている。「保活や乳幼児期とはまた違う大変さが襲ってきて、全然ラクにならないのに、子どもが小学生になれば“子どもは手間がかからない”“24時間働けますに戻れる”と思われている」と彼女は嘆く。

いったい何が壁になっていて、何が変わればいいのか――。調査と取材から浮かび上がる意外な実態について、今回の記事ではご紹介したい。

「小1は大変」が8割

女性活躍のコンサルなどを手掛けるスリール株式会社が今年実施した調査によると、「子どもが小学校に入ったとき、環境の変化に大変だと感じた」共働きの母親は67%にのぼる。「小学生になり、入学前より両立が大変に感じますか?」という質問に対しては79%が「とてもそう思う/まぁそう思う」と答えている。

具体的に、保育園時代といったいどう変わるのか。まず第一に「放課後・長期休みの居場所問題」だ。

共働き家庭では、保育園がそれまで朝から18時くらいまで慣れた環境・ほぼ同じメンバーで過ごすことができたのに対し、小学校は通常、15〜16時頃に帰宅する。そうすると放課後の時間をどう過ごすかという問題が起こる。学童保育という仕組みはあるものの、専業主婦家庭の子はまっすぐ家に帰るため、「あの子みたいに帰りたい」と言い出す子もいる。

「帰りたい」と言われても、6歳くらいの子を毎日家に何時間もひとりにしておくわけにはいかない。仕事を辞めずに続けるため、なんとか学童に行ってもらおうと親たちも必死だ。

さらに長期休みは、親たちの悩みの種だ。学童で一日中過ごすことになり、子どもの「なぜ自分だけが」という不満は大きくなりがちだ。夏休みなど長期休みは、保育園と比べて開所時間が遅い学童も多い。出勤する親が先に家を出て、子どもがひとりで鍵を閉めて学童に向かわなけらばならないというシチュエーションも発生する。

小学校に上がる頃になると子どもの意思と主張はますます強くなり、人間関係から“学童嫌い”を発症することも。スリールのアンケートからは次のような声が聞かれている。

・学童の環境が子どもにとって合わない、気の合わないお友達がいるといった場合に、学童に子どもが行かなくなってしまい、放課後の長い時間の過ごし方に非常に悩まされた。
・学童では大きなお兄ちゃんたちとかかわり、子どもにチックの症状が出ました。結局夏休み、おばあちゃんの家で過ごすようになり、学童をやめました。
・小1の夏休み前、夏休みは毎日学童だと娘に告げると、嫌だと号泣されました。人数が多く、自由度の少ない学童に行きたくなかったようです。

公立の学童の「内容がつまらない」という場合もある。全国学童保育連絡協議会は大規模な学童保育について、指導員の目が行き届きにくくなり、子どもたちも騒々しく落ち着けないと指摘している。「1日中、室内の狭い空間でそれぞれ自由に遊んでいるだけで、退屈だと子どもが嫌がる」という声は少なくない。規模も全体の3割近くが46人以上となっており、全国学童保育連絡協議会は大規模な学童保育は指導員の目が行き届きにくくなり、子どもたちも騒々しく落ち着けないと指摘している。

さまざまな遊びができ、手厚かった保育園時代とのギャップに驚く親も多い。多くの指導員は非正規で、勤続年数が上がっても賃金が上がらない、退職金がないなど条件が悪く、2014年度以降政府も処遇改善や人件費見直しのための予算を確保している。

子どもが長時間退屈しないようなアクティビティを多数用意する民間の学童もあるが、人気の学童の予約は3歳からと言われるほど激戦であることも。夏休みなどはサマーキャンプなどに毎週のように行かせるという選択肢もあるが、費用もばかにならない。しかも、それだけしても、子どもが「学童はイヤ!」と言いかねないのだから、親としてはハラハラし通しだ。

生活習慣の変化やいじめの問題も

ここまで放課後の学校外での居場所問題について見てきたが、次にたちはだかるのが、「学校生活のフォローが大変問題」。

小学校になると、持ち物や宿題などを子どもたち自身が管理しなければならない。加えて勉強が始まるので、親が宿題を見てあげなければならない。至れり尽くせりだった保育園と違い、それらのフォロー負担は親にのしかかってくる。

・帰宅してから夕飯の用意をして食べさせ、宿題を見て、お風呂に入れて、次の日の準備、の一連の流れで子どもを寝かす時間が遅くなる。
・一方で、子どもを早く寝かさないと(睡眠不足で)翌日の授業に支障が出る。初めての授業参観はまさかの息子が爆睡状態。生活リズムを整える重要性を痛感。
・小学校2年生のときに不登校になり、両立が大変難しくなりました。幼児期とは違い、意思も体も強くなりますから、泣いても抱っこして学校に連れて行くわけにはいきませんでした。勉強などの遅れが原因であったようですが、毎日勉強を見てあげる環境も必要です。
・毎日毎日宿題があり、下に5歳と2歳の弟妹がいる中で、やるのは大変。音読さえまともに聞いてやれませんでした。

こうした学校の仕組みに対応した生活の変化に加え、親たちを直撃するのが、子ども同士の人間関係だ。保育園、幼稚園はある程度は長い期間、そして長い時間生活をともにし、先生と子どもたちがお互いのことを知り、信頼関係がある程度できている。一方小学生になると、子ども同士の約束ややりとりも増える年齢になり、多様な家庭が集まるため、親も子も手探りになる。

・下校時の友人関係でトラブルが起きていたことに気づかず(仕事と下の子の育児に追われて気が回らなかった)、学校に報告する事態にまで発展してしまった。
・保育園は毎日保護者も送迎で顔を合わせ、連絡帳に園での様子が書かれていた。だが(小学校では)子ども同士のトラブルが小学校からの友達とあった場合、親同士が面識なく、先生とは電話でしか話せず、状況を子どもから聞き取るしかなく、解決に時間や労力を要した。

都内で公立小に通う子どもを持つある自営業女性は、登下校時に息子がいじめのような被害に遭っていることに気づいたときのことを次のように語る。

「息子は最初、親の介入を断ってきましたので様子を見ていましたが、ランドセルを振り回して車道に出されそうになったり、上級生の女の子が朝登校時にうちの子を蹴るようになったので、この関係性が固定化される前にやめさせようと思いました」

結果的にはスクールカウンセラーがかかわってくれて解決したというが、この女性はほかのいさかいで学校側が対処してくれなかった事例を知っていると言う。

これのどこがラク?

「親側の努力も必要だと思います。できるかぎり役員などお手伝いもやって学校の様子を知ること。あとは、先生の承認欲求にもこたえること。今は、学校に用務員の先生みたいな人がいなくて、総務を先生がこなしているそうです。だから先生が日々の努力でやってくれたことを、メモで感謝を伝えたりしています。これだけで、親への態度は全然違うんですよ。先生だって人間だから」

先生だって人間だから。本当にそうだ。ただし、共働き会社員が担任とのコミュニケーションをとる時間がなかなか見つけられない中、途方に暮れてしまうコメントでもある。

ここまで、小学校に上がって以降の生活の変化について述べた。「子どもが小学校に上がって両立はラクになったでしょ」とは、到底言いがたいことが少しでも伝わっただろうか。

次回記事では、親たちが驚く「非効率」で、ときに「前近代的な」学校生活について紹介する。

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