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高級新車も手に入る残価設定ローンの光と影


期間を区切ってぜいたくを楽しむのも間違ってはいない(写真:pictafolio/iStock)

新車販売が振るわない日本市場で、ドイツの3ブランド(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)や、レクサスを中心とするプレミアム・カーはここ数年、順調に実績を伸ばしている。

その背景にはさまざまな要素がある。中でも販売の現場を強く後押ししているのは「残価設定ローン」の存在だ。


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かつて自動車ローンといえば、新車の値段+諸経費から頭金+下取り額を引いた全額を元金とし、金利を乗せて月割にするシステムだった。諸費用込み300万円の新車を、頭金も下取り車もなく購入するとすれば、そのまま元金と金利の全額を割り算して支払うので、3年ローンであれば月に10万円前後の出費を強いられていたわけだ。

しかし残価設定ローンにおいては、3年間なら3年後にその新車を適切な価格で下取ってもらえるという前提で、3年間に値落ちした相当額だけを支払えばよいという触れ込みだ。これによって、モデルによっては通常のローンの半分程度の支払い額、つまり300万円の新車が月5万円程度の出費で乗り出せるケースもある。

利息が車両全額にかかる、金儲けのテクニック

自動車の耐用年数が伸びる中で、「どうせ買うならいいものを」という心理もユーザーの間では強まっている。そんな背景もあり、いまや従来型のローンも含めれば、前述したプレミアム・ブランドの新車販売に占めるローン利用率は、50%を超えると聞く。

残価設定ローンによって、特に大幅に支払額を抑えられるのは高い下取り額が見込めるケース、つまり中古車になったときに高く売れる可能性が高い人気車種だ。つまり自動車ディーラーとしては、数年後に下取った際に苦もなく再販できる人気車種に販売を集中させられるメリットもあるので、残価設定ローンには通常の自動車ローンより低い金利を設定するケースもある。

多額の借金をするのに月々の支払いは低い、つまり貸す側にとってリスクの高い残価設定ローンを安定的に実現させた背景としては、自動車の信頼性や耐久性が向上し、数年後の下取り車の品質やコストが担保できるようになったことや、一定基準を満たした車両に保証を付けて販売する認定中古車制度の充実によって、メーカー/インポーターによる中古車再販が容易になったこと、自動車ローン自体の規模拡大と審査精度向上により、さまざまなプランニングが可能になったことが挙げられる。

ユーザーにとっても、メーカー/ディーラーにとってもアドバンテージが大きいように見えるこの残価設定ローンだが、はたして死角はないのだろうか。


新車に数年後、下取り価値が残ることをあらかじめ考慮に入れて、価値が減った分だけ払うというのが残価設定ローンのコンセプト(写真:マツダクレジットのウェブサイト)

そもそも忘れてはいけないのは、ユーザーがローン期間に支払う金利は、実は「値落ち相当額」ではなく、「入手した車両代全額」にかかっていることだ。つまり、たとえば支払総額300万円、残価設定額150万円で残価設定ローンを組むのと、支払総額150万円+頭金150万円の通常ローンを組むのとでは、金利が同じ2%としてシミュレーションしてみると、前者のほうが支払総額は1割弱も違ってくる。金利が高ければさらにこの差が拡大する。

メーカーの宣伝を見るといかにも新車価格と3年後の残価の差分だけ支払えばよいように見えるが、実際には車両全体に金利がかかる。ここに金儲けのテクニックがある。考えてみれば、金を借りようとクルマを借りようと、銀行から借金しているのは同じこと。その半面、金利より高い利回りで資金運用する自信がある資産家なら、頭金を入れずに済むとも言える。

返却することが前提

続いて自動車を「使う」という側面から見ると、数年後には車両を返却することが前提とされているので、販売元が基準とする内外装クオリティを保っていなければならず、つまり目立つ傷や汚れは減点対象、改造もご法度。壁にくぎが打てない賃貸住宅に住むようなものだ。走行距離も、事前に定めた距離を超えるとペナルティが課される仕組みになっている。

車両保険も意外と無視できない。最後はクルマを返却しなければならないことを考えると、車両保険もたとえば自損事故にも対応する万全なものをかけておく必要があるが、購入する車両が高額であればあるほど保険料も高くなり、若年者の新規保険契約だと年間数十万円に達するケースも考えられる。

残価設定ローンには2種類ある。「オープンエンド」と呼ばれる輸入車で一般的なものだと、ローン期間終了後の査定次第で差損益が発生するリスクがある。つまり、車両の状態が基準以内であっても、中古車市場で人気がなければ下取り額が低いので、最後に追い金を払って精算しなければならないのだ。

こうしたリスクを販売店が負担しましょう、というのが「クローズドエンド」と呼ばれるタイプで、国産車の多くやBMW、VW(フォルクスワーゲン)など一部のインポーターが選択可能としている。こちらは販売元がローン終了後の下取り額を保証して販売するため、ユーザーにとってリスクが低い代わりに、残価設定額は低くなる。

残価設定ローンは「金融商品」

例えるなら、住宅ローンでリスクを取っても変動金利の低い利率を選ぶか、リスクを取らず固定金利で高い金利を我慢するか、という選択に似ている。このクローズドエンド・タイプのローンはいま人気で、シェアを急拡大している。それでも全メーカー/インポーターが一斉に採用とはならないのは、車両の残存価値が急落するリスクを取るのが難しいからだ。


MINIのサイトでは、通常ローンとオープンエンド型、クローズドエンド型の支払い金額を容易に比較できる(写真:MINI公式サイト)

もう20年近く前の話、英・ローバーがBMWに身売りする直前、日本法人が「ローバー・スマート・オーナーシップ」と銘打って一律3年・50%の残価設定で売り出したものの、本社の経営破綻もあり車両価値が急落、差損を負担したディーラー網の経営を危うくした失敗を覚えている自動車好きや業界関係者は少なくないだろう。

そして販売サイドにとって、3〜5年後にローンが終了するというのは、再び新車を売り込めるチャンスである半面、戻ってくる高年式中古車をうまく処理しなければならないという別のプレッシャーも生じさせている。

最後にユーザーの視点に返ってみると、残価設定ローンがこれまでなら手が届かなかった新型車を、覚悟のうえで入手できる可能性を切り開いてくれたことは大いに歓迎したい。20代の若いうちにスポーツカーで腕と感性を磨きたいとか、結婚して子どもができる前にオープン2シーターを楽しみたいとか、両親が元気なうちに快適なクルマで旅行に出掛けたいとか、人生には後からでは戻れない節目というものがある。3年か5年と区切ってそういうぜいたくを楽しむのは、決して間違っていないと思う。

一方で、これまで述べたとおり残価設定ローンは「金融商品」なので、車種、利用状況、金利、保険などに応じてリスクや負担額は大きく変わる。さまざまなケースを想定して遠慮せずセールスマンから見積もりを取って、慎重に検討することをお勧めしたい。

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