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ユニクロ「無縫製ニット」を支える黒子の正体


島精機製作所の「ホールガーメント」技術では1本の編み糸から多様なニット衣料が完全無縫製で編み上げられる。写真はユニクロが9月から販売を開始した3Dニットのワンピース(編集部撮影)

9月中旬、ファーストリテイリング傘下のユニクロが配布した折り込みチラシ。「3連休特別号!」と題したこのチラシには最近販売を開始した「3Dニット」について「1本の糸から生まれた今までにない美しさと心地よさ。」とうたいあげている。

そのチラシには「日本発の最先端技術が創るホールガーメント」と大きく書かれ、「ホールガーメントは株式会社島精機製作所の登録商標です」との注記があった。

完全無縫製の3Dニット

ユニクロは9月3日から秋冬商品として3Dニットの販売を開始した。10月中旬までにセーター6種類(税別2990〜4990円)とワンピース5種類(同5990円)を順次展開する計画だ。


ユニクロのチラシにも大きく記載されていた。画像はデジタルチラシのもの(ファーストリテイリングのHPから引用)

これまでのニット衣料は、編み糸をまず長方形の板状の編み地としたうえで、型紙に沿って前身頃・後ろ身頃・袖といったパーツを切り取り、そうしたパーツや裏当て布などをミシンで縫製することで1つの衣料に仕立てるという手順を踏んでいる。

今回、販売する3Dニットは、1本の編み糸からニット服を1着丸ごと編み上げる、「ホールガーメント」という技術を採用。襟部分のネームや洗濯ラベルなどを除き、ニットそのものは完全無縫製で編み立てられている点に特徴がある。

衣料のシルエットが、縫製をしないことで、縫いしろや裏当て布で線や凹凸が出ることがなくなり、布が肌に当たるゴワゴワ感も解消される。ニットならではの伸縮性に富んだ柔らかい外観と着心地をもたらすメリットがあるのだ。

このホールガーメント技術を独自に開発したのが島精機製作所だ。同社は衣料向けなどの編み機の大手メーカー。1961年に手袋向けの編み機で創業し、現在はコンピューター制御の横編み機で世界トップのシェアを誇る。

ファーストリテイリングと島精機が提携を発表したのは2016年10月のこと。島精機のホールガーメント製品の生産子会社であるイノベーションファクトリーにファーストリテイリングが49%出資し、資本参加した。

ファーストリテイリングは「ニット生産技術を活用した新しい生産システムの確立」や「将来的には、画期的なニット商品の生産を実現化するマザー工場」にすると表明。すでに2016年、2017年には一部の店舗でホールガーメント技術によるニット衣料が販売されていた。

販売が好調とみた7月、ファーストリテイリングは島精機との「戦略的パートナーシップを強化し、中長期的で包括的なニット商品の開発と技術革新への取り組みを加速」するとし、アジア一円での海外量産体制拡大と生産効率向上、オンデマンド量産システム開発などの目標を表明。そして9月から大々的に3Dニットの販売に踏み切った。

ユニクロのようなファブレス型の衣料製造小売り業態(SPA)は原則として自社工場を持たず、衣料の生産は製造委託先の企業が担っている。製造委託先企業に島精機のホールガーメント機の導入を促し、消費者は直接目にすることのないホールガーメント技術について大々的に“激賞”するのは異例のことだ。

着想は約50年前、高速化に20年かかった

こうしてユニクロから本格販売された3Dニットだが、それを生み出す島精機のホールガーメント技術は実は着想されてからすでに約半世紀が経過している。

島精機の創業者で、「日本のエジソン」と称される1人である島正博・現会長は、1964年に全自動手袋編み機(2017年に日本機械学会「機械遺産」認定)を開発した。島会長は「手袋をもっと大きく、指の数を減らして編めば、セーターの形ができる。手首の部分を長くして折り返せばタートルネックセーターの形だ。そうした構想が湧いてきた」と語る。

そして、1995年に1本の編み糸とプログラムさえセットすれば、デザインどおりのニット服を1着丸ごと立体的に編み上げることができる、完全無縫製のホールガーメント初号機の開発に成功。同年にイタリア・ミラノで開催された世界最大の国際繊維機械展(ITMA)に出展すると「金賞をいただき『東洋のマジック』と呼ばれた」(島会長)。

ただ、機械は高価なうえ編み上げる時間もかかり、「1着当たりの編み立てコストが高かったため、20年間累計で8500台、年間で平均400台しか世に出せなかった」(島会長)と、販売面では不本意なものだった。


島精機がホールガーメント機20周年にITMA2015(ミラノ)へ出展しヒットした「マッハ2XS」(写真:島精機製作所)

こうした問題を一気に解決したのが、2015年のホールガーメント20周年を飾るため開発された「マッハ2XS」だ。

これまでのホールガーメント機では難しかった、島精機の独自技術である可動式シンカー装置の搭載に成功。

可動式シンカー装置は、編んでいるところを常に上から押し下げることで、編み立てをうまく安定させる機能を持った装置だ。これを搭載したことで「ドレス風ニットを含め、生産性が3倍から4倍になった」(島会長)。

マッハ(音速)という名称を体現するように衣料の編み立て速度は高まり、かつての1日12着から、50着まで飛躍的に向上した。

このマッハ2XSは欧州ではイタリア、アジアでは韓国、そして富裕層向けの独自商品企画を打ち出し始めた中国の新興SPA向けなど、各国のアパレルメーカーの注目を集めた。

ホールガーメント機の販売台数はマッハ2XS発売前の2014年度の397台から、発売年の2015年度556台、2016年度707台、2017年度の1081台へと急増している。

「労働集約から技術集約に変えられる」

ホールガーメント技術の採用はアパレルメーカー側にもメリットがある。まずは材料費の削減だ。長方形の編み地から型紙に沿って前身頃・後ろ身頃・袖といったパーツを切り取るという裁断工程がなくなり、素材の30%にも及ぶような裁ち落とし部分(カットロス)がなくなる。

また、前身頃・後ろ身頃・袖や裏当て布といったパーツを縫い合わせる縫製工程がなくなり、人海戦術となってしまうミシン掛け作業がなくなることで、省力化ができる。米国や欧州や日本といった先進国を含めどんな地域でも衣料品を量産できるようになる。

「衣料の生産を労働集約的産業から技術集約的産業に変えられるはず」と島会長は語る。


こうした新製品の好調は島精機の業績にも反映されている。2018年3月期は売上高718億円(前期比15.1%増)、純利益112億円(同56.7%増)と過去最高を更新した。

ただ、今2019年3月期は、横編み機生産に必要な部材・部品の調達難、ヨーロッパ向けのアパレルの生産拠点であるトルコの為替相場急落といった懸念材料を抱える。このまま右肩上がりの好調が続くかは、正念場といえそうだ。

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