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アメリカで「電動スケーター」大ブームの理由


電動スケーターは充電式。ハンドルにあるレバーがアクセルで、時速30キロメートルほどで走る(写真:Skip Scooters)

アメリカの多くの都市で今、「電動キックスケーター」のシェアリングサービスが人気だ。現地では「スクーター」とも呼ばれている。ブームが本格化したのは半年ほど前だ。

背景にあるのが、特に大都市の住民を悩ませる交通渋滞の悪化だ。サンフランシスコでは、車なら1マイル(約1.6キロメートル)進むのに30分かかることもあるが、時速24〜30キロメートル前後の速度が出る電動スケーターなら5〜10分だ。しかも基本料金は1ドルで、1分につき15セントの使用料を払えばよい。

「より多くの人々が、短時間で環境に負担をかけずに都市の中を移動するには、自転車専用道路(を走る電動スケーター)が最も有望だ」

サンフランシスコのスタートアップ、スキップ・スクーターズの共同創業者であるサンジェイ・ダストアCEOは、今や全米に浸透したライドシェアに代わるエコロジー型シェアサービスだとして、スケーターシェアに期待を込める。同社は今年2月、首都ワシントンDCでサービスを開始。すでに当局から営業許可を取得し、今後400台まで提供できる。歩行者が迷惑をこうむったり、街の景観や安全性を損ねたりしないよう、都市によっては営業許可の申請が必要だ。

駐輪場いらず、QRコードで解錠

電動スケーターが許可されていないニューヨークでは自転車シェアが人気だが、駐輪場が必要だ。一方、電動スケーターは乗り捨て自由。GPSが搭載されているため、スマートフォンのアプリ上で場所がわかり、アプリでQRコードを読み取って解錠する。


電動スケーターはハンドル部分に貼られたQRコードをスマホアプリで読み取って解錠する(写真:Lime Bike)

ニューヨーク大学リューディン交通センターの副責任者で、都市計画に詳しいサラ・M・カウフマン氏は、街の密集度が高く自転車専用道路も足りないニューヨークでは、走行スペースの確保が難題だと指摘しつつ、同市でもスケーターシェアが認可されるべきと力説する。「駐輪場が設置されない低所得層の居住地域でも利用できる」(カウフマン氏)。

電動スケーターシェアの3大スタートアップの一角、スピンのユアン・プーン共同創業者兼社長は、新たなビジネスモデルが渋滞に嫌気が差す市民の潜在需要を一気に掘り起こしたと分析する。同社は自転車シェアが主力だったが、今年から電動スケーターにシフト。「こちらのほうが、はるかに大きな需要がある。収益も自転車シェアより多く見込める」(プーン氏)。すでに南部ノースカロライナ州最大の都市シャーロットなどで営業許可を取得した。

一方、許可をめぐっては、問題も起きている。スピンのほか、ライドシェア大手のウーバー・テクノロジーズとリフトで幹部を務めた経験のあるトラビス・バンダーサンデン氏が率いる最大手バード、今年7月にウーバーとの提携を発表したライム・バイクは、サンフランシスコの市当局から運営の中止を命じられた。歩道での走行や乗り捨てに地域住民の苦情が相次いだためだ。


スピンが展開する電動スケーター(写真:Spin)

現在、各社とも営業許可を申請中で、スピンの広報担当者とスキップのダストアCEOによると、現在もサンフランシスコ市都市交通局の認可を待っているという。市当局が5月23日に発表した規制案では、まず、半年間で1250台が許可され、軌道に乗れば、その後の半年間で2500台に増える可能性がある。

最大手バードは史上最速で「ユニコーン」に

投資熱も高まるばかりだ。米メディアによれば、バードとライムの企業評価額はそれぞれ20億ドル、10億ドルを超え、いわゆる「ユニコーン」企業の仲間入りを果たした。特に昨秋創業のバードは、ユニコーンへの到達で史上最短となった。同社は7月、昨秋の営業開始以来、のべ100万回以上利用されたと発表している。ライムは、提携したウーバーのほか、グーグル親会社のアルファベットが持つベンチャーキャピタルからも出資を受けた。


電動スケーターシェア最大手のバードは、創業から1年足らずで「ユニコーン企業」の仲間入りを果たした(画像:Bird、ウェブサイトをキャプチャ)

前出のスキップは今年、創業初期段階の資金調達として600万ドル(約7億円)を集めた。同社への投資を主導したAキャピタル創業者のロニー・コンウェー氏いわく、電動スケーターシェアは人口密集地域での“ラスト1マイル交通”の需要に応え、スタートアップの成功に不可欠な「最適なサービスを最適な市場に提供する」という条件を満たしている。スタートアップの成功の指標となる、「プロダクト・マーケット・フィット(PMF)」のことだ。

「何千とある消費者向けビジネスのうち、PMFがあるものはごくまれだ」(コンウェー氏)。これに加えて、ラスト1マイル交通に懸けるダストアCEOの熱意にも後押しされ、スキップへの投資は「no-brainer opportunity(頭を使って考える必要すらないほど明白なチャンス)だった」とコンウェー氏は言う。

スキップは市当局の規制案づくりにも積極的に協力し、許可を得た自治体のみで営業を始める。自転車専用道路の整備や雇用創出、電動スケーターへの理解を深めるための啓蒙活動にも熱心で、地元のNPOとも協業する。目標は、「車ではなく、現在そして未来の都市に最適な乗り物を普及させること」(ダストアCEO)だ。

市当局による供給数の制限もあり、電動スケーターシェアの市場では需要に供給が追いついていない。使いたい時に使いたい場所で見つからないという不満の声も漏れる。「マイ電動スケーター」を購入する人もいるほどだ。


電動スケーターはアメリカの大都市で深刻な交通渋滞の緩和に一役買えるか(写真:Skip Scooters)

この夏、電動スケーターでワシントンDCの観光を楽しんだというジャスティン・ワンさん(23)は、週末にもかかわらず、スケーターが見つかったラッキーなユーザーの一人だ。西海岸出身のワンさんは、川を隔ててワシントンDCに隣接するバージニア州の街に最近引っ越してきた。

これまでバードの電動スケーター(最速で時速約24キロメートル)とスキップ(同29キロメートル)を試したが、スキップのスケーターは坂道でも楽に上れたという。「電動スケーターがあれば、どんな目的地にでも行ける。渋滞とも無縁で、駐車場を見つける必要もない」とワンさん。道路幅が広く、広々とした街並みのワシントンDCでは電動スケーターシェアが普及しやすいといえる。

供給不足、安全問題など課題も山積

供給不足について、スキップのダストアCEOは、車を使うほうが手っ取り早いという「誘惑」にかられないよう十分な台数が供給されるべきだとしつつも、不十分なインフラの下で電動スケーターが街中にあふれる状態も好ましくないと言う。「要はバランスの問題だ」(ダストアCEO)。

電動スケーターの速度が遅いという声も聞かれるが、安全重視のバードは、運転免許証の保有と18歳以上という条件をユーザーに課している。無茶な走行でけが人が出たり、歩道を走ったりするケースも報じられる中、安全性の向上は急務だ。


ライム・バイクは電動スケーターの開発で、セグウェイ社との提携を始めている(写真:Lime Bike)

ハードの品質で差別化を図る戦略にも余念がない。スピンは電動スケーターの自社開発・生産も検討しているほか、スキップは軽量化やサスペンションの充実など、カスタマイズに力を入れている。

グローバル化への意欲も旺盛だ。今年6月にはライムが、8月にはバードが相次ぎ欧州に進出。各社とも世界展開を狙う。電動スケーターシェアが日本に上陸する日も遠くなさそうだ。

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