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籠池氏を焚きつけかねないメディアの無思慮


保釈後、開かれた記者会見で質問に答える籠池泰典被告。左は妻の諄子被告=25日午後、大阪市の大阪弁護士会館(写真:共同通信)

「財務省の問題で勾留されたのは“国策勾留”であると認識している。家内については全くの冤罪で、まさに人権蹂躙だと認識している」
 
学校法人「森友学園」の補助金詐取事件で逮捕・勾留されていた籠池泰典前理事長は5月25日に保釈され、同日夜に開いた会見で開口一番に不当逮捕・不当勾留であることを強調した。

「大阪府の告訴については、どうも警察と示し合わせた松井・維新の政治的カモフラージュではないかと思っている」などと独特な見解をてらいもなく語る“籠池節”も健在だった。

「小学校建設を諦めたわけではない」

2017年7月31日に逮捕されて以来、300日ぶりに公の場で姿を見せた籠池氏だったが、やつれた様子はなかった。

会見の場で籠池氏が見せたのは、安倍晋三首相への厳しい対決姿勢。発言の端々に痛烈なあてこすりが散見された。

たとえば、「私はこれから活躍させてもらうが、小学校建設は諦めたわけではない。吉田松陰の志を持って進ませていただく」という言葉。山口県萩市の出身の吉田松陰は安倍首相が尊敬する人物で、安倍首相の名前は吉田門下の高杉晋作にちなんでいる。

安倍首相の父方の祖父である安倍寛は「昭和の吉田松陰」と呼ばれてもいた。それに対するあてつけだろう、松蔭の志を継ぐのはこちらとばかり、籠池氏はその名前を持ち出しながら、小学校設立を目指すことを宣言した。ただし、「首相夫妻の威光」を使えなくなったいま、籠池氏が夢を実現させることは、極めて困難といわざるをえない。

憲法改正にも言及した。「今上陛下は憲法9条改正に賛成しておられない。今上陛下が危惧されておられることについては、しない方がよろしかろうと思う」。憲法9条改正は安倍首相の悲願。天皇陛下という権威を持ち出すことで否定してみせるやり口は、「昭恵夫人」を持ち出すことでグイグイ小学校建設を進めようとした籠池氏らしい”論理”だ。しかし、現行憲法下において、天皇の考えを勝手に推測し、しかもその忖度を求めるというのは、まったくの不適切発言だ。

さらに籠池氏は、勾留中に読んだという「貞観政要」まで持ち出した。

貞観政要は唐の太宗の時代に編纂された帝王学のための書で、理想とされた「貞観の治」を実現した奥義が書かれている。籠池氏が引用したのは、「君子たる者はまず、百姓に存すべし」というフレーズ。これは「治者が行うべきことは、何よりも人民を大事に思い、恩恵を施さなくてはならない」という意味である。要するに「安倍首相はそうではない」と言いたいわけだ。

昭恵夫人が秘書に条件交渉を指示したのか

もっとも、籠池氏が強く主張したかったのは「国会の証人喚問で自分が述べたことに間違いはない」ということだろう。焦点は、昭恵夫人が土地取引などに「関与」していたのかどうか。「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」という発言があったため、安倍首相の政治生命にも影響を与える。

籠池氏は2017年3月23日の参議院予算委員会で、次のように証言している。

「土地の買い上げの条件として10年だったものをもっと長い時間へ、期間へ変更できないかとの思いから、私たちの教育理念に賛同している昭恵夫人に助けをいただこうと考えまして、昭恵夫人の携帯に電話をいたしました。平成27年の10月のことです。留守電でしたので、メッセージを残しました」

「すると、後日、内閣総理大臣夫人付きの谷査恵子さんという方から御連絡をいただき、なかなか難しいとのお返事をいただきました。平成27年11月17日に総理夫人付き谷査恵子さんからいただいたファクスでは、大変恐縮ながら現状では希望に沿うことはできない、なお、本件は昭恵夫人にも既に報告させていただいておりますというお言葉をいただきました」

籠池氏のこの証言では、小学校建設用地の取得についてより有利な条件になるようにという籠池氏の要請に応じて、昭恵夫人が動いたということになる。これがもし虚偽の陳述なら、議院証言法により罰せられることになるが、いまだ籠池氏に対する刑事告発は行われていない。

その一方で、財務省が5月23日に国会に提出した近畿財務局の交渉記録の記載に関する質問には、籠池氏も諄子夫人も消極的だった。

交渉記録には諄子夫人が近畿財務局の職員にコースターを投げつけたり、「嘘つき、お前なんか信用できない。帰れ」「あんただけではなく、孫の代までたたられるで(罵詈雑言)」など人間性を疑うような暴言を吐いたことがわかる記載がある。

実際にその態度は近畿財務局の職員の心証を非常に悪くしたようで、わざわざ「担当者心証」として「国の対応の非難及び自己の主張の妥当性を一方的に述べるのみであり、今後も、当方指示に真摯に対応することは期待し難いという印象」という記載まである。

この記述について問われると、諄子夫人は苦笑いするのみで、何も答えなかった。

籠池氏は「財務省に改ざんがあったということは、いまも改ざんがあるということではないか」と、国会に提出された交渉記録も改ざんされているかのような回答をしてみせた。「資料はそのまま本当という認識か。国会で証言した内容と異なるなら、改ざんということだ。コースター問題もそれにかかわるのではないか」と、コースター投げつけさえも改ざんと印象づけるトリッキーな話しぶりだった。


保釈後、開かれた森友学園前理事長の籠池泰典被告の記者会見=25日午後、大阪市の大阪弁護士会館(写真:共同通信)

話はさらに熱を帯びる。「書き換えは国家公務員がすべきことではない。公務員は国民のサーバントだ。そんなことをしたら背信だ」と公務員批判が始まった。

その舌鋒は、国家公務員を率いる最高責任者である安倍首相にも向けられる。「為政者は本当のことを言うべき。正々堂々と伝達・報告すべきものだ」と述べ、昭恵夫人にも「本当のことをしっかりと伝えていただいたらいい」と逮捕前と変わらぬ様子を見せた。

無批判に主張を垂れ流すような報道は控えるべき

「早朝の志を得る初夏の風」

これは保釈の日の朝に籠池氏が詠んだ句で、会見で披露された。それにはこれから安倍首相、昭恵夫人、そして財務省や大阪府に反撃してやるんだ、という籠池氏の確固たる意志が見てとれる。

だが国民が望んでいるのは、「森友問題の真実はどこにあるのか」を解明し、この問題にいったん終止符を打つことだ。引っかき回すトリックスターなら、もういらない。

真相解明を目標とするのであれば、野党もメディアも籠池夫妻の言説については、すでに明らかになっていることとの食い違いを検証しながら取り扱っていく必要がある。とくにテレビメディアは、取材や出演にあたって、先方を焚き付けたり、先方からの条件を過度に受け入れたり、というようなことをするべきではない。昨年と同様、そのようなことをやるのであれば、あまりにも無思慮といえるだろう。

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