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ネット広告が売れない!電通の思わぬ受難


2017年12月期の決算が振るわなかった電通。国内、海外いずれも伸び悩んでいる(記者撮影)

過重労働による新入社員の自殺や相次ぐ不祥事で、近年、社会から痛烈な批判を浴びた電通。業績そのものは最高益を連続でたたき出し、国内広告最大手のメンツを守ってきた。

だが、2月14日に発表された2017年12月期決算は一転して厳しいものだった。収益は前期比10.8%増の9288億円となったが、営業利益は0.2%減の1373億円と振るわなかった。

国内の売上総利益は0.4%減の3619億円。主力のテレビ広告は市況悪化で4.2%減少した。新聞や雑誌、ラジオも軒並み下落、頼みのネット広告も1ケタの伸びにとどまった。調整後営業利益(買収に伴う費用や減損、固定資産売却など一時的な要因を除いた指標)は8.8%減の888億円だった。

利益を押し下げたのは、急ピッチで進める働き方改革に伴う費用だ。人件費やシステム投資などに70億円をつぎ込んだ。残業時間の上限を引き下げ、本社やグループ会社では夜10時から午前5時までの全館消灯を実施。

契約社員なども緊急で大幅増員中だ。社長直轄の労働環境改革本部を軸に人事制度や組織体制の見直しも進めている。改革関連費用を織り込み、国内事業はもともとマイナスを見込んでいたので、大きな驚きはない。

海外事業のネット広告に逆風

誤算だったのは、これまで絶好調が続いてきた海外事業だ。

海外の売上総利益は21.1%増の5160億円と大幅に伸び、調整後営業利益も8.8%増の751億円で着地。一見すると好調にも思えるが、そうではない。この成長はほとんどがM&A(企業の合併・買収)による上乗せ効果だからだ。

為替やM&Aの成長を除いた実質的な成長率はわずか0.4%だった。海外事業を担当するティム・アンドレー取締役は昨年2月、「2017年も(全世界で4%と見込まれる)市場成長率の倍を達成する」と力強く語っていたが、大幅な未達となった。

苦戦の理由は単純で、広告主が出稿を絞ったためだ。しかし、その背景は実に深刻だ。急成長するネット広告に対し不信感が広がっている。

発端は2017年1月、米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の最高ブランド責任者、マーク・プリチャード氏が、ネット広告の業界団体「IAB」のコンファレンスで行ったスピーチにある。数値や効果の不明確さなど、ネット広告の問題点を指摘したスピーチは、欧米を中心に業界の大きな話題となった。

それ以降、「ブランドセーフティ」(ブランド価値を毀損するようなサイトに広告を表示しないようにすること)の問題、「アドフラウド」(人ではなくプログラムが閲覧するなどの広告詐欺・不正)など、ネット広告の負の側面が大きくフォーカスされた。

その結果、P&Gと同様にデジタル広告への出稿を見送るグローバル企業が相次いだ。この影響を受け、電通は海外で思うように成長できず、厳しい決算を強いられたのだ。

続く2018年はどうか。電通は全体の収益を8.4%増、売上総利益を8.8%増、営業利益を17.8%減とする2期連続の営業減益を計画する。

海外は新規案件テコに着実成長へ

海外事業の売上総利益は14%増の5881億円。調整後営業利益は3.1%増の775億円。2017年にベルギーのビール世界大手アンハイザー・ブッシュ・インベブや、アメリカン・エキスプレスなどから約52億ドル(約5600億円)の新規案件を獲得したことで、着実な成長を見込む。M&Aも引き続き500億〜600億円程度の予算で実行する考えだ。


電通の山本敏博社長は海外事業の成長に意欲を見せるが、広告主のネット広告への不信感は大きな不安材料だ(記者撮影)

一方、海外事業の社員数が4万人規模に達したことから、各社の業務の標準化やコーポレート機能の統合などに費用を投じる。新規ビジネス関連の費用も盛り込んでいる。成長速度は鈍化するが、山本敏博社長は「(先行費用は)2019年以降の成長につながる」と説明する。

アンドレー取締役も「2018年の成長は競合他社を上回る最高水準に復帰するだろう。(市況は)2017年第2四半期(4〜6月期)に底を打ち、以降は堅調に回復している。広告主にも再び積極的に出稿する姿勢が見られる」と自信を示す。「M&Aを除く成長率は年間3〜5%がターゲットになる」と説明。その上で、「インフラを整備することで、2019、2020年は大きな成長ができる」と、2018年を飛躍に向けたステップとも位置づける。

ただし、2017年のように、ネット広告に対する広告主の不信感をぬぐえなければ成長シナリオは危うい。電通グループの努力で解決できる問題ではないだけに、先行きは不透明だ。

国内もさらなる改革が続く。2018年は売上総利益が1.3%増の3666億円、調整後営業利益は18.4%減の725億円の計画だ。「事業全体の再構築をするため減益になる。いたずらにトップラインを伸ばすよりも改革を優先する。改革の効果が出る前から労働時間を減らしているので、成果が出てくるまでにタイムラグがある」(山本社長)という。


電通本社ビルは午後10時には全館消灯となる。持ち帰り残業を発生させない、真の働き方改革が求められる(撮影:尾形文繁)

今期は人件費で25億円、業務効率化で80億円、オフィス改善で25億円の費用を盛り込んだ。労働時間のさらなる削減に向け、付加価値の小さな仕事はできるだけ外部委託やRPA(ロボットによる業務効率化)などで代替する。

同時に人材育成も進め、適材適所の配置で正社員数を大幅に増やすことはしない。山本社長は2018年で一連の働き方改革にメドをつけると説明する。

持ち帰り残業やハラスメントへの対策も急務

だが、言うは易く行うは難しだ。一部社員からは「自宅に持ち帰って仕事をしている」といった声も聞こえてくる。また、「残業が制限されている電通よりも広告主の要望を聞けるということで、博報堂に仕事が流れている」と明かす業界関係者もいる。電通は業務効率化と同時に、競合と渡り合える体制を整える必要がある。

働き方のほかにも、電通は大きな問題を抱える。社員のセクハラやパワハラの被害をいかに防ぐかだ。昨年末には元社員の女性が電通在籍時のパワハラ・セクハラで元社員を告発し、ネットを中心に大きな話題になった。米国に端を発する「#MeToo」運動が電通にも波及した格好だ。

最近入社した女性社員は「クリエーティブ以外の部署でも、セクハラになりかねない言葉が日常的に飛び交っている。他社から来た社員はみんな驚いていると思う」と電通の特異性を語る。会社全体にセクハラが蔓延しているということはないだろうが、社員にとって快適な職場を作り、今後優秀な人材を迎えるために、この点でも踏み込んだ改革が求められそうだ。

働き方改革や事業基盤の整備のために「戦略的な連続減益」を決断した電通。山積みの課題を解決し、2019年を飛躍の年にできるのか。2018年は国内外ともに臥薪嘗胆、正念場の年になる。

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