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東芝、米WDと訴訟合戦から「和解」した舞台裏


東芝メモリの四日市工場内に建設中の第6製造棟。今後製造設備への投資はWDと行うことになる(撮影:梅谷秀司)

すったもんだの末、元のサヤに収まった。いや正確にはまったく同じサヤではないが、とにかく一件落着だ。半導体メモリ事業の売却をめぐって訴訟合戦となっていた東芝と米ウエスタンデジタル(WD)が、12月13日に和解した。

東芝メモリ売却実現に一歩前進

米国原子力事業の巨額損失で2017年3月末に5529億円の債務超過に陥った東芝は、稼ぎ頭のメモリ事業を分社した「東芝メモリ」を売却することで債務超過の解消をめざしてきた。しかしメモリ事業の合弁パートナーであるWDが、売却は合弁契約違反として反対。国際仲裁裁判所などに売却の差し止めを求めていた。

一方、東芝は売却の妨害をやめるように逆提訴。9月末には米ファンドのベインキャピタルを軸とする日米韓連合に、東芝メモリを売却する契約を結んだ。その後も両社の対立は続いており、今後の裁判の行方次第で東芝メモリの売却が座礁するリスクが残っていた。

今回の和解により、双方とも訴えを取り下げる。売却完了には各国の独占禁止法当局、とりわけ中国の審査が残るが、売却の大きな障害の一つが消えた。

東芝は12月5日に6000億円の第三者割当増資を実施している。増資資金を使って、米国の原子力関連で東芝が負う債務を清算。そのうえ、東芝が持つ債権を売却する処理により税務上のメリットを受けることができ、2018年3月末までに東芝メモリ売却が間に合わなくても債務超過は回避できる見通しだ。

東芝とWDの関係は、半導体ベンチャーの米サンディスク(SD)が1999年に東芝とメモリ事業で提携したことにさかのぼる。

東芝とSDは技術開発の一部で協業し、三重県四日市にある生産工場の土地、建屋などは東芝が提供する。工場運営も東芝側だ。ペーパーカンパニーである合弁会社が製造装置を購入・保有し、製造したチップは原則、製造装置の費用負担の割合でそれぞれが販売してきた。そして2016年、SDを約2兆円で買収したのが、WDだった。

「もっとも成功した合弁の1つ」

13日(米国時間の12日)の電話会見でWDのスティーブ・ミリガンCEOは東芝との合弁を「技術産業史でもっとも成功した合弁の1つだ」と強調した。実際東芝・WD連合は、巨額投資を必要とするメモリビジネス(NAND型フラッシュ)で韓国サムスン電子と互角に近い戦いを繰り広げてきた。

しかし、東芝は2015年の不正会計の発覚から経営危機に突入。ついにはメモリ事業の売却に追い込まれる。

WDが大枚をはたいてSDを買ったのは、WDの主力事業であるハードディスク装置がメモリに置き換わりつつある現状に対応するためだ。しかし、SDのメモリ事業は東芝に依存する脆弱な構造。しかも、2021年以降に合弁契約が順次終了を迎える。東芝が合弁会社の持分を誰に売るかは死活問題である。

見方を変えれば、東芝の危機はWDにとってチャンスでもあった。東芝のメモリ事業(後の東芝メモリ)を買い取れれば、メモリ事業を自分たちのコントロール化におけるからだ。


東芝メモリの成毛康雄社長。売却交渉中は、WDに対し不信感を持っていたと言われる(撮影:梅谷秀司)

しかし、ここでWDは判断ミスを犯した。

メモリ事業を売却に追い込まれた東芝は最低価格を2兆円と定めた。これは債務超過解消などから逆算した必要額という面もあるが、同事業の価値を考えればそれなりにリーズナブルな価格でもあった。東芝から見ると自分たちより実力が劣るSDをWDが前年に2兆円(190億ドル)で買っている。その時よりメモリ市況は改善している。実際、2兆円を上回るオファーがあった。

にもかかわらず、WDのミリガンCEOが当初提示したのは1兆3000億円程度だったとされる。合弁持分の売却に関して同意権を楯に東芝の足元を見た--。東芝側はそう受け取った。以降、東芝はミリガンCEOへの不信感を抱き続けることになる。

売却に関する同意権があることは確かだが、その適用条件や適用範囲で両社の見解に相違があった。どちらが有利かは専門家によっても異なり、仲裁裁判がどういう判断を下すかは、ふたを開けてみないとわからない状況だった。

初期は2018年3月末までの債務超過解消というタイムリミットがある東芝がどちらかというと不利だったが、実はWDもそれほど余裕はなかった。

東芝(東芝メモリ)は売却交渉の最中も、建設中の最新鋭のメモリ工場、四日市工場第6製造棟の設備投資を着々と実行。WDは対立したままではこの投資に参加できず、来年以降生産される次世代メモリの供給を受けられなくなるおそれがあった。

WDのバランスシートには約1兆円強ののれん、約4000億円の無形固定資産が計上されており、この大半はSD関連である。メモリ事業の将来収益が低下すれば、これらの減損を迫られる可能性がある。

2017年初から上げ基調だった株価が11月後半に急落するなど、徐々にWDへの逆風が強くなっていった。そろそろ手を打つタイミングだった。

東芝からすれば、いつまでもWDと対立していても仕方がない。裁判で勝てる保証があれば、WDをメモリ市場から追い出して将来の需給バランスを緩和する戦略もある。とはいえ、法廷闘争を続けるデメリットのほうが圧倒的に大きかった。

ともに「負け」はしなかった

さて、この和解の勝者はどちらか。何も取れなかったWDだが、もともと東芝が売ろうとしていたのは東芝の合弁持分。それが他社に奪われただけでWDの持ち分を失ったわけではない。


今後も高いハードルが待ち受けている(撮影:梅谷秀司)

多少は失ったものがある。東芝単独で行った第6製造棟の最初の投資から2018年夏に製造される96層の最先端メモリを得られない。一方、第6製造棟の2回目以降の投資は共同で実施。岩手県に建設する予定の新製造棟の投資へも参画する方向だ。さらに合弁会社の契約期間を2027年〜2029年まで延長することでも合意するなど、得るものも得た。

東芝はどうか。わかっている限りでは安易に譲歩した様子もない。ことWDとの交渉ではタフネゴシエーター振りを発揮した。米ウエスチングハウスなどとの関係でこれだけの交渉ができていれば、と思わずにはいられない。

第6製造棟の投資決定が一部遅れたという見方があるが、当初の計画に比べて設備発注は前倒ししている。もちろん、もっと前倒しすべきだった、と言えばその通りである。

「この合意はすべての当事者にとって勝利だ」。ミリガンCEOはそう語った。実際のところは、両社ともに負けはしなかったというところか。しかし、両社のバトルの間も着々と巨額投資を続ける韓国・サムスン電子と相対さなければならない。超えるべきハードルは、依然高い。

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