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日本とベトナムが兄弟のようによく似ている理由

ベトナム・ハノイの夜景(資料写真)


 ベトナムは東南アジアの国。「ベトナム戦争」「ホーチミン」「社会主義」、普通の日本人が思いつくのはそれぐらい。それほど関係のない国だと思っている。しかし、実はベトナムは日本とは兄弟と言ってもよいくらいよく似ている国である。

 そもそもベトナムを東南アジアの国と考えること事体が間違っている。ベトナムはその歴史において、朝鮮半島や日本と同様に中国の強い影響下にあった。その結果、インド文化の影響が大きい東南アジアと考えるよりも、東アジアの国とした方が理解しやすい。

ベトナムと中国、朝鮮半島、日本の位置関係(出所:Googleマップ)


 実際にベトナムは日本や朝鮮半島と同様に漢字文化圏である。首都ハノイは「河内」、ホーチミンは「胡志明」、漢字による表記がある。現在はフランス人宣教師が考案したローマ字による表記が用いられているが、漢字は第2次世界大戦前までごく普通に使われていた。チューノムと呼ばれる漢字を変形した文字も作られている。日本が“かな”を作ったのと同じ感覚だ。

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静かに根付いている仏教

 日本もベトナムも宗教や道徳の根底に大乗仏教と儒教がある。それを“ゆるく”受容した点において両国は似ている。

 ベトナムは日本や朝鮮半島と同様に大乗仏教を中国から輸入した。タイやミャンマーも仏教国であるが、彼らは上座部仏教徒であり大乗仏教とは異なる。その違いを簡単に説明することは難しいが、通俗的な解説をすると、上座部仏教徒は仏教に対する思い入れが強い。タイやミャンマーの人々は自分たちを仏教徒だと強く考えている。

 それに対して中国を経由した大乗仏教では仏教に対する思い入れが弱い。多くの日本人はお葬式の時だけ仏教徒である。ベトナム人もこの辺りの感覚がよく似ている。

 唯物論を奉じる共産党は仏教を弾圧していない。その結果、ベトナムには仏教寺院が多数存在して参詣する人も多い。お葬式だけでなく結婚式も仏式で行う人が多い。ただ、仏式で結婚式を挙げた人も、熱心な仏教徒ではない。日常生活では忘れている。その辺りの感覚は日本人にそっくりである。

政敵を完全には追い詰めない

 そして、ベトナムは日本や朝鮮半島と同様に、中国から儒教を輸入した。その結果として、年長者を敬う感覚が存在する。

 だが、儒教を輸入しても、それは朝鮮半島の人々とは少々異なる。朝鮮半島の人々の行動様式は強く儒教的である。儒教では善悪を峻別する。“悪は悪”“善は善”である。その感覚の延長で敗者を徹底的に痛めつける。

 昨今の朴槿恵に対する裁判を見ていると、「韓国は儒教の国なのだな」との思いを強くする。前大統領を逮捕するだけでなく、囚人服を着せて容易に保釈しない。65歳にもなる女性に対して、この仕打ちである。中国で政争に敗れた薄熙来や周永康に対する仕打ちによく似ており、峻烈である。それが儒教なのだろう。

 中国文明の中心は黄河流域。歴代の首都は常に黄河流域にあった。そこは雨が少なく、小麦地域である。朝鮮半島も雨が少なく寒冷でコメ作に向かない。儒教はそんな地域に向いている。そして、朝鮮にはインドから輸入した仏教が根付くことはなかった。

 一方、日本は儒教の影響を受けたが、それを全面的に受け入れることはなかった。むしろ、誰でも「南無阿弥陀仏」と唱えれば浄土に行けるという“大乗的”な考えを好んだ。

 朴槿恵と同じく汚職で逮捕された田中角栄は短期間で保釈されて議員を続けた。そして現在でも人気がある。彼を悪人だと思っている日本人はほとんどいないだろう。日本では政敵も悪人も死ねば浄土に行く。敵を一方的に追い詰めることはしない。そして独裁を嫌う。“なあなあ”文化の中で、誰が物事を決定しているのかよく分からない。責任の所在も不明確。よく言われる日本の特徴である。

 まさにその“ゆるい”文化がベトナムにも存在する。先日、汚職のためにディン・ラ・タンが逮捕されたが、タンは汚職を摘発されてホーチミン市長を更迭された後も1年以上にわたって政府の別の要職に留まっていた。なかなか逮捕されないのだ。

 ベトナムには中国のチャイナ7に相当する政治局常務委員が19人もいる。そして、共産党書記、国家主席、首相は役割を分担しており、序列一位と言っても共産党書記の力は限られる。現在のグエン・フー・チョン書記長の政敵であり、タンの親分とされ2年前に失脚したグエン・タン・ズン前首相は逮捕されることなく故郷に帰り、未だに豪奢な生活を続けている。

 政敵を完全に追い詰めないのがベトナム流である。この辺り、タクシン元首相やインラック前首相が亡命を強いられたタイや、ロヒンギャと仏教徒の間で深刻な対立が続くミャンマーとは異なる。

日本人とは異なる中国に対する感情

 以上のようにベトナムと日本はよく似ている。ただ、ベトナムは中国と陸続きであり何度も侵略を受けたことから、中国に対する感情が日本人とは異なる。

 ベトナムは中国の強い影響下にあったために、今でも中国との関係に敏感にならざるを得ない。日本でも首相や外務大臣が中国に対してちょっとでも下手に出ると、「右寄りの人々」から朝貢外交との非難が飛ぶ。それは中国を強く意識していることの裏返しなのだが、ベトナムにもそのような感情が強く存在する。はっきり言って、ベトナム人は中国が大嫌いである。

「安倍首相は中国が嫌いなようだが、首相が変われば田中首相の頃のように中国と仲よくするのではないか」 ベトナム人は現在日本が中国に強硬な態度で接していることを好ましいく思いながらも、心のどこかで日本の変節を心配している。

 交通手段の発達により両国は近い国になった。飛行機に乗ればハノイまで約5時間である。ベトナムは中国の次に近いアジアだ。もっと仲よくしてもよいと思う。今、ハノイのホテルでこの原稿を書いている。

筆者:川島 博之

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