戻る


48年前のフェラーリが2.3億円で売れた理由


長い間日本で眠っていた希少なフェラーリ「デイトナ」が、オークションに出品された ©2017 Courtesy of RM Sotheby's

赤いボディカラー、黄色と黒であしらった「跳ね馬」のエンブレム、流麗なデザイン――。

一目見てそのフェラーリだとわかるスポーツカーだが、外観はホコリだらけ、ボディの艶もなければ、室内もシートはすり切れ、ホコリが堆積している。ちゃんと走るどころか、エンジンも掛かるかどうか怪しい。

もともと安定した相場で取引されるモデルだが…!

そんなクルマに2億円を超える値段が付いた。


フェラーリファンの間では「デイトナ」の愛称で知られるモデル ©2017 Courtesy of RM Sotheby's

9月9日、イタリア・マラネッロ。フェラーリの本拠地で開かれた同社の70周年祝賀行事で目玉イベントとなったオークションに、日本から出品された50年近く前に製造されたフェラーリが大きな話題となった。

名称は「365GTB/4」。フェラーリファンの間では「デイトナ」の愛称で知られるモデルだ。デイトナは1968年から1973年にかけて1200台余りが生産されたフェラーリ・ロードカーのフラッグシップたるV12気筒エンジン搭載車で、レオナルド・フィオラヴァンティの筆によるピニンファリーナデザインは高い人気を誇る。

デイトナはオークションにおいても人気は高く、昨年の主要オークションにおける落札価格は60万〜105万ユーロ(約8000万〜約1億4000万円)という高値を記録。もともと安定した相場で取引されるモデルだが、今回、出品されたデイトナは180万ユーロ(約2億3300万円)という、その中でも特に破格の金額で落札された。

今回落札されたデイトナは、今年48歳の人が生まれた1969年に30台目のデイトナとして製造され、イタリアの自動車雑誌『オートスプリント』誌のオーナーの下に納車され、その後、ヴェローナ、ラヴェンナのオーナーを経て1971年に日本へと送られた。


フェラーリのスペシャリストが来日し、鑑定を行った©2017 Courtesy of RM Sotheby's

岐阜、愛知のオーナーを経て、再び岐阜のオーナーの下にデイトナは収まり、その後、40年余りガレージでほとんど動かすことなく保管されていたという。今回のオークション出品に際して、フェラーリのスペシャリストが来日し、鑑定を行い、ボディ、エンジン、ギアボックス等の製造番号含め、オリジナリティの高い1台であることを証明するリポートが出された。

通常のデイトナのボディがスチール製であるのに対して、より軽量なアロイと呼ばれるアルミニウム製のボディを纏(まと)っている。記録によれば競技用の4台と、この市販用1台のみが、アロイボディとして製造され、デイトナの中でもたいへん貴重な1台だ。総計5台という製造台数からもわかるように、これらは専用の治具を用いながら熟練したボディ職人たちがアルミ板をたたいて成型したハンドメードボディなのである。


デイトナの中でもたいへん貴重な1台©2017 Courtesy of RM Sotheby's

この汚れは「セールスポイント」

そんな素性を持った希少な1台が日本の岐阜県の納屋の中に眠っていた。ただ、冒頭に記したようなホコリだらけの状態で、クルマに詳しくない人なら、見向きもしないかもしれない。

だが、実はこの汚れは「セールスポイント」なのだ。納屋にしまわれていたこと、日本で見つかったことも評価のポイントである。


手を加えずに新車のまま維持され続けた個体も、大いに価値がある©2017 Courtesy of RM Sotheby's

クラシックカー業界ではこういう長期保管の手つかず案件を「納屋物」と称する。クラシックカーはピカピカな状態に復元されたコンクールコンディションのクルマも評価が高いが、この納屋物のような「Preserved condition(プリザーブドコンディション)」、つまり復元なしに新車のまま維持され続けた個体も、大いに価値がある。こういったヒストリーやそのクルマのかつてのオーナーの名前によっても付加価値がつくのがクラシックカーの世界だ。

まとめれば、今回出品されたデイトナが高く評価された理由は3つある。

人気のデイトナの中でもさらに希少なアルミボディを持つ
有名自動車雑誌のオーナーに納車された(彼はエンツォ・フェラーリの親友でもあったそうだ)
40年余り外界から遮断されて存在した証拠である汚れを持った「納屋物」である


汚れを取ったら、その価値も減ってしまう!©2017 Courtesy of RM Sotheby's

そこで、オークションハウスも、この情報を世界に配信して、今回のオークションの話題を高めるためのツールとして活用したのだ。それにしても担当者は運搬には気を使ったであろう。もしも関係者が“気を使って”、きれいにホコリを拭いてしまったら元も子もない。汚れを取ったら、その価値も減ってしまうのだから。

クラシックカーにこそ必要な3要素

拙著『フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ 伝説を生み出すブランディング』でも詳しく解説しているが、フェラーリのようなラグジュアリーブランドをつくるためには、「独自性と持続性」「希少性」「伝説」という3要素が必要だ。

こういったクラシックカーにこそこの3要素が当てはまる。「独自性と持続性」を最重視するフェラーリというブランドの生み出したクラシックカーに「希少性」「伝説」がたっぷりと付加されるのだから、鬼に金棒だ。


オークションのスタートとともに金額は急上昇(筆者撮影)

さて、実際にオークション会場でこの個体はどのように評価されたのだろうか。ビッド(入札)前にクルマをじっくりと観察できるプレビューにおいてこのデイトナを眺めてみたが、新車同様のピカピカの状態を目指して復元する「レストア」には相当な金額がかかるだろうと私は踏んだが、実際のオークションではスタートとともに金額は急上昇した。5万円ほどの入場料を払って、会場内でビッドするだけでなく、今回は電話を使って会場外からビッドする参加者も多かった。あっという間に1億円を突破。最終金額の180万ユーロ(約2億3300万円)は、デイトナのオークションにおける最高落札記録を更新した。


デイトナのオークションにおける最高落札記録を更新した(筆者撮影)

こういった「納屋物」を手に入れたオーナーはそれをどのように楽しむのであろうか?

レストアする? それともそのまま楽しむ?

一つには数千万円をかけてレストアするという考え方があるだろう。レストアが完成した暁には有名コンクールイベントに出展し、お墨付きを得た後に、自身で楽しむのもよし、売却するもよし。もう一つは、そのまま「納屋物」として保管し、楽しむという選択肢だ。自宅のガレージにそのままの状態でディスプレーするのもよし、機械部分だけをレストアしボディはそのままで走行可能なように仕上げるという手もある。


「フェラーリの旧車が『億円単位』で売れる理由」(2016年1月12日配信)にも書いたように、2015年2月にフランスで開かれたクラシックカーのオークションでも、塗装も剝がれ、ボディも傷だらけだったにもかかわらず、1961年製の250 GT SWBカリフォルニア スパイダーが約21億円という、とんでもない価格で取引された。

これは何十年もの間、フランスの片田舎の納屋に忘れ去られ、ホコリがうず高く積もった状態で発見された59台のコレクションのうちの1台だ。その中のもう一台、1956年マセラティA6G2000を2億円近くで落札した建築家のジョナサン・セガール氏は、今年のイタリア コモ湖畔で開催された有名コンクールイベントにこのクルマを”ボロボロ”の状態で出展した。彼はこのように語ってくれた。


納屋物マセラティ(筆者撮影)

「私は単にクルマを手に入れただけでなく、すばらしい歴史を手に入れたことができたと考え、大いに満足しています。入手後に軽い整備をしただけでこのマセラティはパワフルな走りを見せてくれました。実際に走るとき、タイヤだけは替えましたけどね」

原文リンク

本站帖子來源於互聯網,轉載不代表認可其真實性,亦不代表本站觀點!
關於本站| 官方微博| 私たちの関心網| よくある問題| 意見反饋|copyright 私たちの関心網