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サービスの組織力向上の3つの観点 (3) 【連載サービスサイエンス:第26回】/松井 拓己

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サービスの組織力向上の観点の2つ目と3つ目は、東京大学の藤本隆宏教授が提唱されている、産業は情報を“転写”するビジネスであるという「情報転写モデル」をヒントにしてみようと思います。

この情報転写モデルでは、製造業では「製品の設計情報を素材に転写することで価値を生み出している」とされています。つまり、自動車メーカーであれば、開発部門が作った自動車の設計情報を、生産部門がプレス機や金型を使って鉄板に転写して部品をつくり、それを組み上げて自動車を製造して、価値ある自動車をお客様にお届けしているというわけです。これに対してサービス業を比較してみると、大きな課題が2つ浮かび上がりました。

サービスは設計情報を人に転写して価値を生み出している

「サービスの設計情報をサービススタッフに転写することで、価値を生み出している」と捉えることができます。モデルとしては製造業と同じですが、詳しく見ていくと、興味深い違いに気付きます。

はじめに、「転写」に着目してみましょう。製造業では設計情報をモノに対して転写します。自動車であれば鉄板に転写してボディーのパーツをつくります。その転写スピードは秒単位で、短時間のうちに大量で均質な転写が可能です。しかも、一度転写したら安定的にその形を維持することができます。自宅のガレージに停めてある自動車が突然、鉄板に戻ってしまった、ということはあり得ません。

では、サービス業における転写はどうでしょうか。サービス業では、サービスの設計情報を人に対して教育やトレーニングという形で転写することになります。この転写は決して秒単位ではできません。何時間も何日もかけて教育やトレーニングを行っていく必要があります。しかも、転写対象が人なので、徐々に効果が薄れてしまったり、忘れてしまたりと、転写前の状態に戻ってしまうことがよくあります。「先月、あんなにトレーニングしたのに、今日、また同じミスをした」ということはサービスの現場では日常茶飯事です。

このように「転写」について製造業とサービス業を比較してみると、サービス業において「転写」が極めて重要であることが分かります。しかし実は、教育やトレーニングに熱心なのは製造業の方なのです。ではサービス業ではどうしているのでしょうか。多くの会社では、OJTという言葉を都合よく解釈して、「経験を積みなさい」「背中を見て学びなさい」と言って、いきなり現場に立たせてしまう。もちろんOJTによる経験は非常に重要ですが、個人の経験に頼った人材の育成では、サービスの組織力向上の効果は限定的でといえます。つまり、サービスの組織力向上の2つ目の観点として「転写(人材育成)」に組織的にテコ入れすることができると、まだまだ伸びしろはたくさんあると言えます。

サービスにだって設計情報が必要

次に3つ目の観点として「設計」も比較してみたいと思います。

製造業において、設計にはヒトも時間もお金もつぎ込んで、命がけで取り組んでいます。それに対して、サービス業ではどうでしょうか。会社の組織図を見ても、「サービス設計部」という部署すらない会社がほとんどです。実際には、サービスを設計は「現場任せ」で、現場のサービススタッフが経験やセンスで良かれと思うサービスを考えて提供しているのです。これでは、サービスの内容や品質がばらつくのは当然と言えます。つまり、サービスの組織力向上の3つ目の観点は、「サービス設計」です。サービスのレベルアップのためには、組織的にサービスを設計して運用していく必要があるのです。

「設計」と「教育トレーニング」を組織的にテコ入れする

このように、製造業とサービス業を「情報転写モデル」を参考にしながら比較してみると、CS向上やサービス向上の大きな課題が浮かび上がってきます。少し極端に表現すると、サービスの現状は、「非常にあいまいなサービスの設計情報を、転写が難しいヒトに対して、現場任せな教育トレーニングで転写しようとしている」と言えます。これでは、サービスの組織力向上がうまくいかないのも当然と言えるでしょう。サービスでお客様に喜んでいただき、サービスで差別化するためには、「サービス設計」と「サービス教育トレーニング」について、組織的にテコ入れできるかがカギになるのです。

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